葉山・鎌倉・湘南の個性的な不動産 + 不動産プロデュース | 進行中プロジェクト | 葉山下山口「The Canvas Hayama Park」

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進行中プロジェクト

第5回 【最終回】バラガン、ただしブルー

2017/05/30 Tue

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「葉山に暮らすと、まとまった休暇のたびに海外リゾートへ脱出したい!という欲望はなくなる」

そんなことを葉山住民からよく耳にします。

都心に住んでいると、それこそ発作のように、あるいはハードワークで消耗した自分へのご褒美として、次のバケーションではどのリゾートへエスケープしようかと考え、それを心の拠り所に日常をやり過ごすことがあるかもしれません。
人は何を求めて海外リゾートへの脱出を図るのでしょうか。

もちろん、異国の人々や文化の中に身を置き、そこでしかできない珍しい体験をすることも旅の醍醐味。しかし、ことリゾートへの旅の目的の一番は、「海や山、自然のそばで、何も考えずにぼーっとする時間が欲しい。いろんな責務から解放されて、ただの自分自身に戻りたい」ということなのでは。

葉山では、海や山がすぐそばにあるのが日常です。
ちょっと自分をリリースしたくなった時、逆に充電したくなった時、いつでもどこかに緑が見え、どこにいても少し歩けば海に辿り着く。
明るい太陽があり、潮風が吹き抜け、だいたいいつもサンダル履きの足元からは土の感触や草の匂いがしてくる。
地元の人は良い店やリラックスした仲間との楽しみ方をよく知っていて、オープンでありながらお節介ではなく、顔を合わせればいつでも挨拶し、ゆるやかに繋がりながらも、自立している。

そんな暮らしが日々送れているのだから、おそらく人がリゾート地に行って得たいと思っているほとんどのことが葉山ではすでに日常で、あえて他の場所へ求めに行かなくても十分に潤っているのだと思います。

葉山に流れるこうした「暮らしの空気・時間」を体感させてくれるのが、御用邸と海のすぐそばにある宿泊施設「The Canvas Hayama Park」です。3棟のヴィラからなるこの施設は2016年にOPEN。一つ一つが一戸建てと同じ広さや設備を持ち、「この地に暮らすように滞在する」をコンセプトとしています。3棟それぞれ異なるデザインの室内は、葉山の底流にある別荘文化を汲み、モダンデザイン黎明期の人物・思想が何もない素地(キャンバス)のところから自らの思考を開拓して行った感覚に立ち返りながら、現代の葉山を五感で味わうための空間づくりがなされています。

今回は最後の1棟「Minamo」の室内をご紹介します。

エントランスの通路は大胆なブルーで塗られています。まるで海の中に潜っていくような感覚。

この棟はメキシコの建築家ルイス・バラガンが、もしブルーをキーカラーにしたらという着想から生まれました。
濃厚なブルーの空間とアースカラーの対比によって、
モダニズムと地方性をデザインで両立させようとした彼ならではのエッセンスとして取り入れています。

その「ブルーの通路」の一画はギャラリースペースとなっており、写真家 伊藤資人導(いとうしとみち)さんのフォトグラフィーアートが飾られています。伊藤さんが葉山に滞在し、先ほどのような「葉山時間」を過ごす中で巡り合った景色を写したもの。

*伊藤資人導さんのサイトはこちら 

ブルーの通路から続く1階のバスルーム&パウダールームには、スタイリスト石井佳苗さんの提案で、補色関係にあるテラコッタ色を採用しています。鮮やかなブルーをより引き立てつつ、建物全体で調和とバランスを取っています。仕上げに用いている耐水・耐油性にすぐれたモルタル風特殊左官材モールテックスは色バリエーションが豊富で、このような微妙なニュアンスの色も選べるのが魅力。

こちらは1階にあるベッドルーム。ダブルベッドを2つ連ねてもなおゆとりのある空間は温もり感のあるグレーを基調とし、ベッドフレームの木部やデュベカバーのくすんだピンクが、大きな開口部から見える山の緑とともに優しい彩りをもたらしています。


2階に上がると、そこはLDKのスペース。

この「Minamo」の棟は、子どものいる家族の滞在をイメージしてつくられました。

1階のブルーと対比するテラコッタカラーをベースにしつつ、濃い赤や緑、黄色、白といった自然界を想起させる生命感のある色や、エスニックスタイルのインテリアを散りばめています。壁の一部にはボルダリングの突起も設置。空間全体が「動き」や「遊び心」を感じさせる楽しげな要素で彩られているのが特徴です。

家族で過ごす団欒のための場所でありながら、アートの「インスタレーション的」な非日常のワクワク感に包まれています。

The Canvas Hayama Parkは、葉山の風景の中に溶け込み、共用部を中心にまちの中へも半ば開かれた形で存在しています。ご提供しているのは、海や山に近いこの地での暮らしを感じながら過ごす豊かな時間。3棟3様の室内デザインは、ふだんの自分の暮らしのセンスや生き方を一つ上へと持ち上げてくれるような「気づき」の糸口となることを願って、葉山にゆかりのある多くのクリエイターたちが共作しています。


■インテリアスタイリング:石井佳苗さん
www.kanaeishii-stylist.com

■アイアンのらせん階段、外部サイン:橋本大輔さん/WERKSTATT-WAL
www.werkstatt-wal.jp

■アイアンのオリジナル照明フレーム:堀場央さん/ancre meubles
ancremeubles.com

■植栽・外構:hondaGREEN
hondagreen.com

■オリジナル家具制作:WRIGHT
wright-jp.com

■ロゴデザイン:冨安修一さん/Sankofa
sankofa.jp

■フォトグラフィーアート:伊藤資人導さん
shitomichi.com

■室内装飾・演出:DEFI CREATION
defi-fleur.com

■施工:ワイズホーム
www.y-s-home.com

■建物写真:東涌宏和/東涌宏和写真事務所
10-89.com


■土地仲介、プロジェクトコーディネート、設計デザイン:ENJOYWORKS
*エンジョイワークス一級建築士事務所のWORKSはこちら
https://theskeletonhouse.com/works/17







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第4回 バウハウス、1919年に立ち返る。

2017/05/16 Tue

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季節は初夏、葉山の山々は若葉の盛り。
同じ緑でも葉の形やトーン、質感の柔らかさまで千差万別の多様な樹々が、日に日に生い茂って行きます。
夏に向かって今がいちばん緑のモザイク画を楽しめる時。
葉山は海も魅力ですが、それに負けないくらい緑も美しいのです。

海まで歩いて1分ほどの場所にありながら、葉山の緑が室内からも眺められるという、「海も山も」の贅沢なステイを楽しめるのが、全室ヴィラタイプの宿泊施設「The Canvas Hayama Park」。
このブログでは、この施設ができるまでのストーリーと、3棟それぞれに異なる室内の意匠をご紹介しています。

葉山というまちが、古くから別荘地として海外の先進的な建築デザインを日本的な洋風建築としてうまく咀嚼してきたという稀有な文化を持つことに敬意を払い、その流れを遡って感じてみる、思考してみる、というコンセプトのもとに、3棟それぞれに異なる室内がデザインされました。

今回は、真ん中のB棟「Unkai」を見てみましょう。

スケルトンハウス30坪タイプ(延床面積99.36㎡)のこの棟は、3棟の中で最も大きな建物です。

入り口のドアを開けてすぐに目に飛び込んで来るのは、グレイッシュでモダンな印象。
そこへ程よくアクセントとなって明るい気分を与えているのがキッチンの壁に使われている少しくすんだイエローです。そして、山側に設けられた大きな吹き抜けからは部屋全体に光が行き届きます。

この棟のデザイン・キーワードは「バウハウス、1919年に立ち返る」です。
モダンデザインの礎となったバウハウスが私たちにくれたのは、美しく使い勝手の良い物がもたらす、のびやかな幸福ではないかと思います。

このB棟「Unkai」では、そんなバウハウス誕生時に想いを馳せながら、シンプルな中に「デザインの存在」を感じる空間づくりを行いました。
矛盾しているようですが、デザインの存在を感じつつも、それだけが迫り来るような威圧のない、そこに居る人があくまでも部屋の主人としてリラックスできる分量と組み合わせが計算されています。スタイリスト石井佳苗さんがセレクトした丸みのあるアンティークのダイニングテーブルも、この空間の硬質さの対極にある存在として互いを引き立てあう役割。

それらが全体的に調和して、シャープすぎない、冷たすぎない「自然なクールさ」でこの部屋を満たしています。

こちらはリビングゾーン。吹き抜けの空間に吊るされた照明は、横須賀にアトリエ「Ancre Meubles」を構えるアイアン作家 堀場央(ほりばあきら)さんの制作。
デザインは、堀場さん、石井さん、弊社設計士との合同で、元来重いはずの巨大な岩石の形を繊細なスチールロッドで幾何学的に構成しました。

背の低いソファが頭上の空間をいっそう引き立て、美術館のようなアーティスティックな雰囲気が漂います。その中でイエローのクッションや、革のチェア、ファーなどが温もりを差し、無機質になりすぎないバランスに仕上がっています。

アイアンのらせん階段(葉山のアイアン作家 橋本大輔さん/WERKSTATT-WALL作)を上ると、2階にはライブラリーと2つのベッドルームがあります。

通路に面した棚には、世界各国の建物や自然にまつわる写真集が収められており、革張りのデイベッドでくつろぎながらページをめくるのも豊かなひと時。正面の開口部からはたっぷりとした自然光と葉山の緑が感じられます。

このThe Canvasは、一戸建てと同様のつくりではありますが、住居ではなく宿泊施設。「非日常感」をそこはかとなく感じさせ、泊まる人のセンスをさりげなくひとつ持ち上げるような空間づくりをしています。

棟のうち唯一、2ベッドルーム仕様のB棟は、2組の家族やカップルが一緒に泊まるのに適しています。
吹き抜けに面しているこちらのベッドルームには内窓を設置し、光や開放感を取り入れたつくりとしました。

ほんのりとグレイッシュな、落ち着きのある壁の一面にアクセントカラーとして用いた水色は、海までの近さを思い起こさせます。

1階にあるパウダールームやバスルーム、トイレなどの水回りは、グレイのモールテックスと黒の床タイルによるモノトーンの空間に、木枠の円形ミラーをランダムに配置し、デザインによる遊び心を加えています。

こうして見てくると、空間とインテリアのバランスによる印象の変化に驚きますね。
やはり1つ1つの物のデザインだけでなく、よりマクロな視点で全体の調和をイメージすることが、質の良い空間づくりには欠かせないようです。

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第3回 イームズ自邸のアルコーブから

2017/04/27 Thu

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葉山でも指折りの美しい海の近く。
御用邸のあるこのエリアには、静かで穏やかな、特別な時間が流れています。

そんな場所に2016年11月にオープンした、全棟ヴィラタイプの宿「The Canvas Hayama Park」は、「この地に暮らすように滞在する」ことをコンセプトとし、木の外観の3つの一戸建てがシンボルツリーと小屋を含む共用デッキでゆるやかに結ばれた施設です。

3棟それぞれ全く異なる世界観で仕上げた室内空間は、横須賀にアトリエを持つスタイリストの石井佳苗さんがディレクション。弊社の設計士と石井さんは各棟のテーマを共有し、それに基づいて設計士が建物の設計図を描く一方で、石井さんは色の使い方や素材・設備のディテール、インテリア、アメニティなど空間を彩る要素を吟味していきました。

*スタイリスト石井佳苗さんのサイトを見る

葉山は昔から多くの別荘が建つ場所であり、アート&クラフトやアールデコなどのデザイン思想が日本的な洋風建築としてうまく咀嚼されてきたエリアです。
3棟それぞれ異なる趣向で仕上げた室内は、いずれもモダンデザイン黎明期の人物・思想が、意匠の分野が確立していない素地(キャンバス)のところから自らの思考を開拓していったその感覚に立ち返り、発想の端としています。

今回はいちばん小さな、24坪タイプ(延床面積79.48㎡)のA棟をご紹介します。

この棟は「イームズ自邸のアルコーブ」、そして「犬と暮らす」をキーワードに空間づくりを行いました。

ベージュ系のトーンを基本に木や革の自然素材、アースカラーの石材など、ミッドセンチュリー的なしつらえの中にプリミティブな要素を調和させた、暖かみのある仕上がりとなりました。

この棟のみ愛犬と共に滞在できます。

赤みのある革張りのソファとローテーブルは家具作家の河野俊介氏(WRIGHT )にオーダーしたもの。ベージュベースの空間に馴染みながらも存在感のあるアクセントとなっています。

また、1階と2階を繋ぐアイアンのらせん階段は、葉山在住のアイアン・アーティスト橋本大輔氏(ヴェルクスタットヴァル)作。優雅なフォルムが非日常感をより際立たせると共に、空間を引き締めています。

1階の玄関とリビングを隔てるほんのりとピンク味を帯びたベージュの壁には、弊社設計士のちょっとした仕掛けがあります。
この壁にはドアもないし、らせん階段の手前で終わっているので、いわゆる個室として区切る意味はない壁なのですが…
「玄関を開けていきなりリビングにすることもできるけれど、壁があることで逆に空間が意識され、心理的な落ち着きが得られるのがこの壁の効果です」
なるほど、壁というのは「区切る」という機能だけでなく、そこに建っていることでその周りの空間にもニュアンスを与えるものになるんですね。


キッチンはシンクまで一続きにモールテックスで仕上げています。
モールテックスは、わずか塗膜1mmほどの厚みでモルタルの風合いになる、耐油・耐水性に優れた特殊塗料です。
カラーも何十種類もある中で、A棟では床の色にも馴染むサンドベージュをセレクトしました。

2階はゆとりのあるベッドルームとなっています。
オーセンティックな雰囲気を醸し出すパーケットのフローリングに、艶のある木製のベッド、そこに合わせたネイビーのデュベカバー。正統派の気品の中で、プリミティブなフォルムのスツールが遊びを感じさせます。

窓から海が見えるのも、このA棟の魅力。

寝室の奥にあるパウダールーム&バスルームも、ベージュのモールテックスと天然石でまとめています。

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第2回 自然の中にとけこむ小さな集落

2016/01/26 Tue

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葉山御用邸と海の近くの静かな土地に完成した「The Canvas Hayama Park」は、遥か昔からこの地に流れる「豊かな自然環境の中に漁村と別荘が共存するまちなみ・コミュニティである」という文脈を大事にしています。
かつて別荘だった大きな敷地を、巨大な1棟のホテルにするというう選択肢も、もちろんあり得たかもしれません。しかしそれは果たしてこの葉山のまちなみやコミュニティにふさわしいものでしょうか。

「The Canvas Hayama Park」の事業主は、そのことを深く理解していました。この土地は、海の真ん前ではないが、思い立ったら歩いて1分程で海に出られるし、交通の要であるR134からも1本脇へ入った所にある。だからこそ落ち着いた穏やかな雰囲気があり、この界隈の住民はみんなそれを愛し大切にしている。そんな素晴らしい環境でありながら、用途地域は宿泊業が可能な「一種住居地域」であるという点に最も価値がある。ここには「いかにもリゾート」というような構えの施設ではなく、まるでここに暮らすように、我が家のように、ゆったりと滞在できる施設こそ似つかわしいのではないか。

そんな想いを私たちと事業主はしっかりと共有し、「The Canvas Hayama Park」を計画しました。そして完成したのは、自分の別荘のような感覚で滞在できる、独立した3棟のスケルトンハウスを共用部のデッキで繋いだ、ヴィラタイプの宿泊施設。私たちがいつも個人のお客様に向けて「住まい」として提案している環境共生型の小さな集落「ヴィレッジ」スタイルの施設となりました。

「ヴィレッジ」とはエンジョイワークスが提案する複数棟が集まってつくる住まい方のスタイルです。プライバシーを確保しつつも各棟の間には塀等は設けず、土地への建物配置や窓の開け方、また外構・植栽計画をうまく利用してゆるやかに仕切り、通風、採光、風景等をシェアしながら互いに心地良い住環境を得ることができます。

*「ヴィレッジ」の詳細を見る


「The Canvas Hayama Park」においても、各棟をヴィレッジの考え方で計画しており、とくに中央部のデッキスペースは、全体の一体感をつくり出すだけでなく、葉山の周辺にも半ば開くかたちで、セミパブリックな場をも形成しています。

建物としては「スケルトンハウス」を採用し、シンプルな箱形、外壁の木材、窓のデザインと外観としての統一感を図るとともに、2階建てのボリュームや隣棟間隔により、地域にも馴染む、落ち着いたまちなみの一部になっています。

さらに帳場や備品類の保管場所となる附属の建物も、スケルトンハウスの小型版である「スケルトンハット」のSサイズを採用することで、ヴィレッジ的な志向をより補強する形としました。

弊社が創業以来、何年にも渡って取り組んできた新しい「住」スタイルの提案の集大成が、「ヴィレッジ × スケルトンハウス × スケルトンハット」からなる「The Canvas Hayama Park」という形で実現したと言えるかもしれません。

「The Canvas Hayama Park」の外構を見てみましょう。

建物があって、その残りの隙間に植栽を埋めていくような外構の在り方から、建物の合間もまた空間であると捉え、その場をよりクリアに感じられるつくりとしました。

植栽を担当したのは、鎌倉のガーデナー hondaGREENです。
代表本田さんの植栽はいつも、自然の風景をそっと移植したような気負いすぎないリラックス感があり、湘南エリアには彼のつくる庭やランドスケープのファンが大勢います。
デッキ中央のシンボルツリー「アキニレ」を筆頭に、その他の主な高木系は、クロマツ、ウバメガシ、ロシアンオリーブ。中低木系はヒメユズリハ、フェイジョア、ニューサイラン。海に近い場所柄、潮風にも強い樹種から選定しながら、重い見た目と軽い見た目の木々をミックスしてまとめています。

本田さんに今回の植栽について伺ってみると、
「マツの形も日本庭園ぽいものではなく、海辺に自生しているような自然な樹形のものを吟味しました。また御用邸の近くの浜辺に群生しているハマゴウなども植えてあります。葉山の海の風景をここでも感じてもらえるように」

*hondaGREEN


次回は、各棟の内部をご案内します。

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■The Canvas Hayama Park 公式サイト
https://thecanvashotel.jp

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第1回 「葉山」という、ひとつの物語の中に

2016/11/26 Sat

葉山は、一説には「端山 はやま」であったとも言われています。
神々や精霊、動物たちだけが住む「深山 みやま」と、人の住む里との境にある場所。
そのせいでしょうか?
今でも葉山は、雑然として喧騒に満ちた数多の街とは、空気が違うように感じます。
霊峰富士を正面に望む美しい相模湾の眺望、温暖で過ごしやすい気候、海にも山にも恵まれた自然豊かな葉山の地には、鎌倉時代には源頼朝も保養のためによく訪れたと伝えられています。

葉山に最初の別荘ができたのは明治21年(1888年)のこと。
その前年に横浜~国府津間に鉄道が敷かれ、大磯、藤沢、鎌倉などに海水浴と保養を目的として別荘が建てられるようになりました。

その頃の葉山はまだ戸数1000戸にも満たない小村で、土着の人々によって海辺では半農半漁、里山では農林業が営まれていました。そんな葉山にも、ドイツ人医師ベルツらによって気候の良さと風光の美しさが広く世に紹介されると華族や皇族、政府高官が相次いで別荘を構え、明治27年に御用邸が完成すると葉山のステータス性は一気に高まり、一大別荘ブームが起こります。中でも御用邸を中心とした海岸側はとくに人気が高く、有栖川宮、北白川宮などの皇族や、岩倉公爵、井上毅、金子堅太郎、桂太郎ら政府高官の別荘が連なりました。

この頃から葉山のまち並みには、半農半漁の素朴な景観に、別荘文化の華やかさが入り混じるようになります。別荘はその周囲を「佐島石」という三浦半島特産の石を積んだ石垣と生垣・竹垣で覆っていることが多く、もとは漁村の細い田舎道の両側に建ち並んだ別荘によって、現在もなお残る「葉山の小径」の風景が作られていったのです。そして別荘で過ごす人々と土着の人々は互いに持ちつ持たれつ、洗練された都会の文化と、地場の新鮮な野菜や魚を交換しながら、仲良く共生する葉山の風土を育てていきました。

「The Canvas Hayama Park」のある土地は、遡ればこの明治の別荘文化の時代から存在していました。海まで歩いて1分足らずの場所にある400㎡を超える広大な敷地。私たちがこの土地に出会った約8年前まで、ここには古い平屋が空き家のまま残されていました。きっと誰かの別荘だったのでしょう。海からの陽射しや潮騒に包まれながら、都心よりもゆっくりと流れる時間の中で過ごす幸せな日々があったに違いありません。

そんなある日、突如としてその古家が取り壊され、この土地が更地になってしまいました。

折しも葉山では、あちらこちらでかつて別荘や保養所であった広大な土地が売りに出され、大型のマンションが建設されたり、細かく区割りして分譲されたりと、まちの景観を変貌させてしまうような事態が起こっていました。
葉山を葉山たらしめている今までの文脈が、呆気なく分断されていく。葉山の物語を語ってきた佐島石の小径が、無造作に消えていく。

「この土地はいったいどうなってしまうんだろう?」

どうかこの場所の景観や環境がこのまま良い形で守られてほしい。そんな想いで調査するうちに、私たちは、かつてこの地で幼少期を過ごし、今は遠く県外に住んでいるという土地の売主Nさんに巡り会うことができました。
当時の私たちは創業からわずか2年ほど。目立った実績もありません。それでも当時から私たちには「家が2つ集まれば、それはまち並みの始まり。”自分さえ良ければ”ではなく、周りの自然や環境やご近所、まちとのつながりを意識した家づくりのプロセスを提案したい!」という想いがありました。それを思い切ってNさんにぶつけてみたのです。

あなた方に預けましょう、とNさんは仰ってくださいました。
ただし、この土地はいくつかに分けるのではなく一括で販売してほしい、というのがNさんのご意志でした。

葉山の中でもR134と海との間にあるこの土地は希少価値が高く、さらにこれだけ広いとなると自ずと高額になり、これを一括で購入できるお客様はかなり限られます。
なんとか良い形での販売を模索する日々が続きました。3人のお客様によるヴィレッジスタイル(複数戸からなる環境共生型の住まい方。一つの大きな土地を共同で購入し、境界を植栽などでゆるやかに仕切りながら環境をシェアして暮らす弊社の新しい住まい方提案。詳しくはこちら)での契約が決まったにもかかわらず、東日本大震災によって頓挫したこともありました。

そんな中、2015年の春に、私たちはこの土地で「葉山小屋ヴィレッジ」という催しを開催することにしました。
毎年ゴールデンウィークに合わせて行われる葉山町全体を会場としたアートフェスティバル「葉山芸術祭」への参加企画として、この土地を少しでも多くの人に知ってもらうきっかけにしようと考えたのです。
まだ肌寒い3月から、地元のアーティストやクリエイター、大工さん、有志ボランティアの人々が集まり、400㎡超のこの土地に個性あふれる7種の小屋を少しずつ作っていきました。
すべての小屋が完成した時、ご高齢の売主Nさんの代理として甥であるIさんが、わざわざ遠くから会場を見に来てくださいました。
大きいのや小さいの、カラフルなのや四角や三角…さまざまな小屋が立ち並んだ土地に立ち、Iさんは
「懐かしい。小さい頃よくそこらで遊んだものです」
と目を細めました。

そして出来上がったこの小屋では約1ヶ月間に渡り、さまざまな小商いやワークショップを開催しました。近隣住民の方々はもちろんのこと、葉山町内外からのべ1000人を超える大勢の人が集まり、地域との楽しい交流を生み出しました。それは見方によっては、Nさんからの皆への素晴らしいプレゼントだったと言えるかもしれません。

*葉山小屋ヴィレッジの様子

葉山小屋ヴィレッジからほどなくして、私たちは一人のお客様と出会うことができました。
この土地で宿泊事業をやってみたい、という事業主さまです。
海が目の前、というようないかにもリゾートっぽい位置ではなく、R134からも1本入った所にあるために保たれている静けさと穏やかさ。そんな奥ゆかしい場所だからこそ、古き良き別荘文化の時代のように、ゆったりと「暮らすように滞在する」上質で味わい深い時間を提供できる施設にしたい。このエリアに馴染み、地元コミュニティーの一部になれるようなものにしたい。
事業主さまと私たちの間で、3つのスケルトンハウスからなるヴィレッジスタイルの宿泊施設の計画が共有され、土地の売主Nさんからも温かなご理解を得ることができました。

私たちが長きに渡りこの土地をお預かりしている間、ただの一度も急かすことのなかったNさん。
「このような恵まれた環境に広い土地を持つ者は、それを誰に売るのか、どう活用されるのか、慎重に考えなくてはいけない。その判断が、まちを大きく変えてしまうこともある。それが売る側の務めです。」

こうして、この土地は長い長い年月を経た末に「The Canvas Hayama Park」の計画地となりました。
遥か昔から続く「葉山」という大きな物語の中に溶け込んでいく、新たなエピソードのひとつとして。

次回は、The Canvas Hayama Parkの全体像についてご紹介していきます。

*The Canvas Hayama ParkのWebサイトを見る


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※参考文献:「葉山の別荘」杉浦敬彦 著/用美社、「葉山のこみち」NPO法人 葉山環境文化デザイン集団 編集/用美社

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