BLOG「逗子市U邸「70's RENOVATION 」」
第1回 一目会ったその日から
逗子市山の根。
ここに1976年に建てられた、大きくて立派な家がありました。
けれども長らく空家のまま放置され、一般的には建物の価値は無くなってしまい、「土地」として販売されていたこの物件をUさんが見つけた時から、この家の2番目の物語が始まったのです。
題して「70's リノベーション」。
このプロジェクトでは、Uさんと旦那さま、そして子供たちが、DIYを交えながらこのヴィンテージハウスを生まれ変わらせて行く様子をご紹介して行きます!
陸屋根(平らな屋根のこと)、四角い建物、バルコニー。
1970年代に一斉に建てられたこのタイプの家は、数も多く、住宅街ではお見かけすることもしばしば。
戸建のリノベーションというと昭和初期の古民家を想像しがちですが、このようなミッドセンチュリーのヴィンテージハウスも実はリノベ素材に好適。
なぜなら、この年代の建物は軽量鉄骨造りであったりすると特に躯体や基礎が良い状態のまま残っていることが多いし、内部も今では稀少になってしまった「日本製」。木やガラス、真鍮など本物の素材で日本の職人がきっちり作っていて、物が良いんです。
山の麓に樹々に埋もれるようにして建っていたこの家を、前面の道路から一目見た瞬間に「あ、かわいくなる!」と直感したとUさんは言います。
もともと美大出身のUさんは、以前に旦那さまとスペインに住んでいた時、現地のボロボロのアパートを二人で力を合わせてリノベーションした経験もあり、物づくりが得意。今回は屋根や外壁、配管、設備などプロでなければできない所はお任せし、自分たちでできるところはDIYしながらコストを抑えつつ夢の家を実現することに決めました。
長年メンテナンスが不十分だったため、屋根の一部は完全に雨漏り状態、ほぼ葺き替えることに。であれば、同時に外壁も塗り直すことにして、家全体に足場が組まれました。
この家の中で、少しずつ、でも大胆に、リノベーション開始!
次回は内部をご紹介します。
第2回 クロス貼り
小春日和の山の根U邸では、少しずつリノベーションが進んでいます。
どうしてもプロでないとできないところ(躯体や配管、設備等に関わる部分)以外はできるだけ自分たちで造ろうと決めたUさんファミリー。
1階の水周りを工事してもらっている間に、同時進行でできることを進めようと、本日は2階の部屋のクロス貼りに挑戦です。
Uさんのお友達の大工さんが、貼り方を教えにきてくれました。
まずはクロスに均一に糊をつけて指定した寸法に切ってくれるマシンの使い方を伝授。Uさんの真剣な眼差し…。
糊付と裁断が終わったクロスを、壁に貼って行きます。
まずは先生がお手本を。クロスを壁に当て、真ん中から外へ向かって、空気が入らないように幅広のブラシみたいな道具でなでつけていきます。その間わずか2秒ほど!職人さんの無駄のない動きと仕上がりのきれいさに一同感心しきり。
Uさんはポイントをi-Phoneでメモメモ。
さて、次はいよいよ自分たちで。
美大時代の「ツナギ」を着たUさん、糊付マシンに挑戦中〜!
中古物件は時に謎めいていることがありますが、今回も壁から出たコンセントを発見。これを差すと、何に電気が流れるのか…家自体?謎すぎます!
これをうまく処理してクロスを貼らねばなりません。
Uさん達のクロス貼り、その仕上がりはいかに?
次回へ続きます。
第3回 ギュギュッとフローリングを
前回の、壁から出ていた謎のコンセント跡。
からの、逗子U邸です。
山の根の静かな住宅街にヴィンテージハウスを手に入れたUさん一家。できるだけ自分たちの手でリノベーションしようと決め、旦那さまと2人でコツコツ、日夜家づくりを進めています。
この日はフローリング貼り。
もともと分厚い絨毯が敷かれていた1階の部屋。絨毯を剥がしてみると、なんと剥き出しのコンクリートが出てきました…!
床をフローリングにする予定だったのですが、まさかコンクリートが出て来るとは思ってもいなかったUさん。とは言え、この部屋のドアと床との高低差を考えると、このコンクリートにフローリング材を直貼りする以外になさそう。
ということで、意を決して貼り始めました。
フローリング材の溝に、次のフローリング材の出っ張りを噛み合わせて、ボンドで貼っていきます。下がコンクリートなので柔軟性がなくけっこう難しいようです。
でも、手を動かした分だけ出来上がっていくのがモノづくりの醍醐味。それが自分の家ならなおさらですよね。
着々と床が出来ていきます。仕上がりが楽しみですね!
こっちはプロにおまかせして、トイレになる予定。
お風呂は光のいっぱい入る空間に仕上がる予定です。
さて、次回はいよいよ、完成後の様子をお伝えします!
第4回 【最終回】色と光に彩られた、スペインを感じる家
逗子市山の根にある70年代に建てられたヴィンテージハウスを購入し、屋根や外壁、水回り、設備といった家の根幹に関わる部分はプロにお任せしつつも、仕上げの大部分は旦那さまと二人でDIYによるリノベーションを行って来たUさん。
「ほぼ完成しました!」とのお知らせを受け、ある春の晴れた日、生まれ変わったU邸へお邪魔しました。
出迎えてくれたのは新しく交換したドア。白い外壁に木目の感じが映えます。家の顔となる玄関ドアを交換するだけで、中古住宅ってガラッと印象が変わりまね〜!
入ってすぐのお部屋は、以前は絨毯の敷かれた「応接間」でした。重厚なソファや分厚いカーテンで、なんとなく重々しい雰囲気がありましたが一転!お客様も家族も寛げる明るいリビングへ。壁の一部だけ色を変えてアクセントにしました。塗りムラがまた良い感じです。ブルーグレーの壁にイエローの照明が効いてますね。
こちらは新しいキッチン。以前は真っ暗な納戸で、背丈以上の古いタンスやたくさんの物が押し込められていたところへ、キッチンを丸ごと移設。業務用のシンクや作業台がタイルとマッチして、「厨房」感出てます。料理が得意で研究熱心なUさんにとって、キッチンはとても大事な場所。納戸だったときは塞がっていた窓から自然光が差し込み、壁面の黄色と相まって、ワクワクする創作の場所になりました。
「この部屋が一番変わったかもしれない」とUさんがおっしゃるのは、2階の寝室。実はこの部屋はもっとも建物の傷みが激しく、屋根からは盛大に雨漏りし、そのために部屋中がカビていたんです。床も屋根も壁も全て改修し、ここにもブルーとイエローのテーマカラーを。Uさんの色使いは、やはりどことなくスペイン的。ビビッドな色が、太陽の陽射しが強いスペインの景色を思い起こさせます。
そして、最も太陽の恵みを楽しめるバルコニー。傷んでいた防水シートを取り替え、椅子やテーブルを置いて、第2の屋外リビングへ。ここで過ごす時間はきっと素晴らしいものになるはずです。
物件との出会いからほぼ1年。プロの助けも借りながら、自ら手を動かすリノベーションで世界に1つだけの家をつくったUさんご夫妻。その「自分の家づくりを楽しむ」姿に、私たちもワクワクさせていただきました。
初めてこの家を訪れたときの長年放置されていた廃墟感はもう微塵もなく、今はみずみずしく明るい色彩と光、子供たちの声にあふれ、ここからさらに数十年、生まれ変わった新しい物語が綴られて行くことを、家自体も喜んでいるように感じました。
(終)