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BLOG「鎌倉長谷K邸「古民家シェアハウス」」

第1回 古民家リノベーション開始

2015/02/05 Thu

江ノ電「長谷」駅から歩いて2分ほどの所に、鎌倉でも1番と言っていいほど緑青の屋根が美しい、小さなお寺があります。本堂をぐるりと囲むように植えられたさまざまな植物が四季折々の花を咲かせ、ここでは長谷の喧騒を忘れて穏やかな安らぎに包まれることができます。
そのお寺のお隣に、この春、素敵な場がまた1つ生まれることになりました。

「長谷シェアハウス」。
昭和初期に建てられたという数寄屋造りの平屋の日本家屋と、平成に入ってから増築された2階建ての一軒家が一体となった、ユニークな建物。
しかも太陽がたっぷりと降り注ぐ南側には、40坪を超える素晴らしい庭が広がっています。
昨年、弊社が現オーナーさまに仲介させていただいたこの古民家が、今、シェアハウスとして生まれ変わろうとしています。

オーナーKさんは、美大生の頃に留学していたイギリスで仲間と一軒家をシェアして住んでいました。
その後日本に戻って暮らしながら、そういった物件がまだまだ少ないことに疑問を感じ、かねてからシェアハウスを自分自身で運営したいと探していたのです。
「一人暮らしは、食べ物にしても資源にしても何かと無駄が多いものです。価値観の近い人同士がライフスタイルや労力や知恵を分かち合うことで、よりシンプルに、かつより豊かに暮らすことができればいいなと思い、このシェアハウスを始めることにしました。」

昨年秋から、古民家再生の専門家である建築家や大工さんと進めてきたリノベーションの打合せ。
築60年を超える平屋部分には床下を中心に相当の傷みがありましたが、二間続きの和室とそこに続く南向きの縁側からの庭の眺めは、何物にも代え難いこの家の醍醐味。ここにこそ多くの人が訪れてほしいと考え、日本家屋の良さをできる限り活かして修繕することにしました。

2月4日、立春の朝。
新しい季節の始まりと共に、古民家リノベーションが始まりました。
まずは北側の部屋の解体から。
この部屋は過去に一旦洋室へとリフォームされていたのですが、傷みも激しく、今まで開かないガラス戸が嵌っていた壁はいったん取り壊し、日本家屋の座敷部分と同じ漆喰の壁をもう一度作り直すことにしました。

壁がなくなり、北の部屋にも光と風が入りました。
新しい壁には、オーナーが自ら山へ採りに行った竹を編んでそこに土や漆喰を付けていくそうです。
古民家独特のリノベーションが面白いですね!

このブログでは引き続き、長谷シェアハウスの様子をレポートしていきますのでお楽しみに!


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第2回 生かす所、変える所

2015/03/08 Sun

季節は啓蟄。
日差しもすっかり春らしくなり、土の中で眠っていた虫や蛙たちが目を覚ます頃になりました。
長谷の小さなお寺の脇「古民家シェアハウス」のリノベーションもいよいよ本格的に進んでいます。

床も壁もすっかり取り払われた古民家部分。縁の下が数十年ぶりに陽の光にさらされています。辺りには土のいい匂い。

改めてコンクリートで基礎が打ち直され、その上に新しい柱で躯体の補強がなされています。
よく見ると、古い柱でまだ使えるものは残し、傷みがひどい部分は新しい材を使って修繕されていますね!

かつてはこの上に柱が載っていた石。
縁の下に押し込まれていたさまざまなガラクタも、きれいさっぱり片付けられ、風通しの良いこと。
南の素晴らしい庭に面した日当たりたっぷりの縁側も、傷みのためいったん外されました。
きっと、この場所にはこれから大勢の人が、陽の光に包まれながら庭を眺め、さまざまなことを語り合ったり、お茶を飲んだりするのでしょう。そんな最高のもてなしの場だからこそ、しっかりと直す必要があるのですね。

外と内、人と人、昔と今をつなぐ素敵な場所に生まれ変わるために。新しくする所とそのまま生かす所を見極めながらの修繕作業。何より引き継ぐべきは、鎌倉のこの地にある「心」。
それを十二分に心得たオーナーと大工さんによって、古民家リノベーションは続きます。

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第3回 みんなでつくる「シェアハウス」

2015/03/31 Tue

春分を過ぎ、太陽のエネルギーがいよいよ力強くなり始める頃、長谷の小さなお寺の隣にあるKさんの「古民家シェアハウス」では、壁の再生が始まりました。
傷みのために一旦取り払われた古民家部分の壁。この家が建てられた当時と同じく、昔ながらの伝統的な土壁で再生することになりました。それも、友人知人たちとのワークショップ形式で。

花曇りの朝、シェアハウスに集合したのは日本家屋再生を数多く手がける建築家の日高氏、オーナーのKさん、そしてご縁のある友人知人やそのご家族。今日は「竹小舞(たけこまい)」といって、壁の芯となる部分をスライスした竹を編んで作って行く工程です。
日高氏が先生となって見本をやって見せながら、みんなで編み方を覚えます。

オーナー自ら、材料となる竹をカット。

柱に空いた穴に、先端を合わせて竹をセットします。この柱は一部古いまま残しているため、建築当時に開けられていた竹小舞用の丸穴が、そのまま生かせるんですね。
横に渡した竹に、垂直に竹を組んだら、丈夫な棕櫚縄で編んで固定して行きます。この縄がゆるいと壁の強度が出ないので、しっかりと力を込めて編んで行きます。これがなかなか難しい!壁のあちら側とこちら側で2人一組が向き合って息を合わせながらの作業です。

こんな感じの手作業なので、1日ではとても終わりません。何日もかけて編んで行きます。その度にまた違う顔ぶれがKさんの元を訪れます。参加した人たちみんなの力でつくっていくシェアハウス。合理的とは言えないかもしれないけれど、スピードやお金に換えられない何かが、ここにはあります。一生懸命結んだ縄のそこここに、みんなの温かい気持ちが込められて、それだけでこの家の居心地が想像できます。たとえここに住まなくても、家づくりに参加した全ての人の心に「あの壁、私が編んだんだ」という思い出が刻まれて、完成後もまるでふるさとの家のように訪れるのが楽しみになることでしょう。
そう、もう「シェアハウス」は始まっているのですね。

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第4回 土壁塗り

2015/04/03 Fri

桜の咲く頃、長谷の「古民家シェアハウス」では、無事に竹小舞が終わり、いよいよ土壁塗りが始まりました。

材料となる土。日本国内で採れた物を使います。西日本と東日本では土の色がちょっと違うとか。東日本の土は富士山の火山土の影響なのかやや黒みを帯びており、西日本の土は白っぽく明るい色をしているそうです。

この土を水で溶いて、刻んだ藁を混ぜ、よーく練って土壁の土を作ります。それだけでも大変な作業。

壁塗りももちろんワークショップ形式。竹小舞の隙間に押し込んだ土団子を、オーナー自らコテでのばします。水加減や練り加減で土の固さが違い、意外と力も要るし思った以上に難しい!

プロの手も借りつつの共同作業。外を塗ったら、今度は中からも塗ります。その力加減によっては壁に凹凸ができてしまいます。土が乾き切ってしまうとのばせないし、タイミングの見極めも重要。お天気によっても左右されますしね。
こんなふうに伝統工法による家づくりを見ると、昔の人の知恵や技術や勘や粘り強さなどに、ただただ尊敬の念を覚えるばかりです。
昔は当たり前だったことが、今では特別なことになってしまった。それは便利になって良い面もあるし、その傍らで、誰かが覚えておかなくちゃいけない、伝えて行かなきゃいけないという気持ちにもさせられます。
私たちの祖先はずっと、この四季と地震のある日本で、木と土と紙でできた自然素材の家を世界に誇れる高い技術で作って来たっていうことを。

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第5回 【最終回】縁側のある座敷

2015/06/04 Thu

梅雨の晴れ間のある日、オーナーさんからだいぶ工事が進んだとの知らせを受け、長谷の「古民家シェアハウス」を訪れました。
行ってみてびっくり!
こないだまで外壁の内側は床板もおぼつかない感じだったのに、きれいな座敷が出来上がっていました。

南側の美しい庭に面した縁側の床板も、無垢の材で貼り直され、端正な表情になりました。
サッシは大きなペアガラスに交換されて、寒い季節でもたっぷりと日差しのぬくもりを愉しめそうです。

縁側から続く座敷の畳も一新されて、清々しい香りがいっぱいにたちこめています。オーナーが選んだのは紫の縁(へり)。真新しい畳の初々しい若草色と、シックな紫のコントラストがきれい。これから経年して畳の色が変わっても、紫なら上品で優しい印象に見せてくれそう。

そして、この座敷にはオーナーのお知り合いの茶道家の助言もあって、炉を切りました。ここは、現代に生きる私たちに刺激や進化を与えてくれる文化や知恵をシェアする「場」。この座敷に集まり、四季折々の庭を愛でながら茶の湯という素晴らしい伝統をみんなで味わう日も遠くはないはずです。

日本家屋らしく床の間もきれいに整いました。今は可愛らしいガーランドがかかっていますが、そのうち書でも掛けようかなとオーナー。
早くもこのシェアスペースでは、さまざまなイベントが予定されているそうです。
家や場所は、そこに人が居て、暮らしや行事を営むことで生き生きと活性し、ますます艶を帯びてくるもの。現在のオーナーに住み継がれたこの古い日本家屋で、これから新たな物語が生まれると共に、忘れてはいけないことが語り継がれていくのでしょう。

オーナーがこのシェアハウスにつけた名前は「ユリイカ」。ラテン語で「見つけた!」「分かった!」という意味を持つこの言葉には、この場所に集まった人々がより善く生きるための大切な何かを喜びと共に発見してほしいという、オーナーの温かな想いが込められています。

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