BLOG「葉山ヴィレッジ堀内プロジェクトA棟「2人のアイアン作家がつくる家」」
第1回 この地にあったもの
一口に葉山と言っても、さまざまなエリアとそれぞれの特徴があります。
ここ堀内は、葉山の中でも逗子駅からのアクセスが最も良いエリアの一つ。
海岸沿いの主要道路R207を、水平線や江ノ島、富士山を横目にバスで走ること約7分。最寄りのバス停からも歩いて2分ほどの場所に、現在新しいスケルトンハウスを建築中です。
ここから葉山の海までは目と鼻の先。同時に、スターバックスやスーパーマーケットのユニオンなどがある葉山の中心地にも歩いてすぐに出られるので、都心通勤者にはもちろんですが、海遊びが大好きという方や、葉山で自然に囲まれてのんびり暮らしたいけど生活が不便なのは困る、といったご要望の方にもおすすめの立地です。
このスケルトンハウスが建つ場所には、以前、古家がありました。
とても可愛らしい佇まいの、シルバーアクセサリーのお店だった建物です。
葉山の太陽の光のように明るいイエローで塗られた室内では、海辺に似合う涼しげなアクセサリーたちがキラキラして、お客様の笑顔と共に話に花が咲き、幸せな空気が満ちていたことでしょう。
そんな味のあるこの古家を、いろいろと調べ検討した結果、建物として生かすことはできないと分かった時、私たちはとても残念な気持ちでした。せめて違った形でこの古家のエッセンスを生かしたいと、建物の解体の時にはワークショップを催し、一般のお客様に建具や小物などを取り外してお持ち帰りいただいたりもしました。
そして、更地となったこの堀内の土地に、私たちは2棟のスケルトンハウスからなるヴィレッジをつくることにしました。
間口から奥へ向かってJの字を逆さにしたような変わった地形を利用し、互いにプライバシーを尊重しつつも、塀などであからさまに隔てるのではなく、植栽を共有しながらゆるやかに区切って、どちらの棟からもこの地の自然の恵みを享受できるよう配置する計画です。
先に建てた奥のB棟は、内装(インフィル)をスタイリストの石井佳苗さんにディレクションしていただき、先ほどの古家から出た建具などを新しい設備と組み合わせて、ノスタルジックでありながらも洗練された新たな世界観の中に生まれ変わらせていただきました。
>>B棟(ご成約済み)のブログはこちら
一方、今回建築中の手前側のA棟では、あの古家の「お店」というエッセンスを生かしてみようということになりました。
この場所はR207から徒歩20秒。この近所に住む人たちにも、他のエリアから訪れる人にも、足を運んでいただきやすい立地です。ただし、いかにもテナントビルみたいなものは、ここにはそぐわないと私たちは思いました。
葉山が好きで、自分自身がここで暮らす中で自然と生まれてくる幸せや喜びを、「お店」という形でみんなと分かち合う。そんな「店舗兼住居」のスタイルを、やろうと思えばできる構造の家。それがいちばんしっくり来ると思ったのです。
秋のある晴れた日、弊社の設計士が、A棟の遣り方(工事に着手する前に建物の正確な位置を出す作業)を行いました。これから始まる新しい家づくりにワクワクしながら。
この地に昔からあった樹齢200年のシンボルツリー「ソテツさん」が、その姿を優しく見守ってくれているようです。
第2回 2人のアイアン・アーティスト
毎年ゴールデン・ウィークの頃に催される「葉山芸術祭」が物語るように、葉山をはじめ、逗子、鎌倉、横須賀などのいわゆる湘南エリアには、アーティストやクリエイターと呼ばれる人たちが数多く住んでいます。
このエリアの海や山、そこに流れる濃密な時間、繊細な空気、都心との交流の中で育まれてきたカルチャー、人々の好意的な眼差しなどが、彼らの強い感受性や旺盛な創作意欲を引き出したり、刺激したりするのかもしれません。
今回、堀内A棟のスケルトンハウス計画が始まるのと時を同じくして、私たちは偶然にも、2人の地元アーティストと関わることになりました。
1人は、葉山在住の橋本大輔氏(写真左)。
もう1人は、横須賀在住の堀場央(ほりばあきら)氏(写真右)。
両氏ともに、そろって「鉄」を素材にものづくりをしているアイアン・アーティストです。
扱う素材は同じ「鉄」ですが、お二人のバックボーンやアプローチは全く違います。
橋本さんは、鉄をハンマーで叩いて作品を作る「鍛金(たんきん)」という手法を特徴としています。東京芸術大学で学び、オブジェなどのアート作品はもちろん、インテリア、エクステリア、店舗内装、住居のリノベーションなど幅広く手がけ、大工仕事など施工までしてしまう作り手です。
弊社では以前にも、葉山の「茅木山ヴィレッジ」にて外構のプレートや、鉄製の階段、ペーパーホルダーなどを作っていただきました。
鉄という重厚で硬い巨大な素材を、冴えた切れ味でシャープに仕上げる精確な完成度には、毎回感嘆させられます。かと思えばペーパーホルダーにも伺えるように、鉄に内在する柔らかさや温度を感じる有機的な整形もお手の物。
一方、堀場さんは、主に溶接によって作品を作ります。もともとアパレル業界でファッションの仕事をしていた堀場さんは、展示会や店舗で洋服をもっとかっこよく見せられる什器が欲しいと常々感じていました。そしてある日「無いなら自分で作ろう」と思い立ち、鉄でハンガーラックなどを作り始めたのがこの道に入ったきっかけ、という変わり種です。
ヴィンテージ品と見紛うばかりのエイジング加工を施した什器は、堀場さんの得意とする領域。その「味」出しの匙加減には、セオリーを超えたセンスが物を言います。自分がかっこいいと思う物をコツコツ作るうちに、今では名だたるアパレルブランドから、什器や、店舗のアイコン的存在となるインテリア・エクステリアパーツの注文が相次ぐまでになりました。
そんな個性豊かな2人のアイアン・アーティストと知り合った私たちは、今回の堀内A棟の内装に「鉄」「金属」という素材を取り入れてみることにしました。店舗ではよく用いられるこの素材が、果たして「住居」にどんな風に入り込み、どんな振る舞いを見せるのか。
さらに今回の依頼は、お一人ずつに別々のパーツをお願いするのではなく、お二人の共作・合作で仕上げていただきたいと要望させていただきました。もちろんこんな依頼は、橋本さんにとっても堀場さんにとっても初めて。
「どうなることやら、初めてのチャレンジが多すぎて全く想像がつきません(笑)」とお二人。
2人のアイアン・アーティストが「家」と出会った時、そこに何が生まれるのか?
今後の進捗をお楽しみに!
第3回 事前の仕掛け
アイアンアーティストのお2人が打ち合わせと準備を重ねている一方で、堀内ヴィレッジの現場ではA棟の基礎打ちが始まろうとしています。
基礎の形に枠を組んで鉄筋を張り巡らせ、そこへコンクリートを流し込んで作るのですが、今日は弊社の設計士たちが事前チェックに訪れました。
指示通りに鉄筋が均一に配置されているかを丁寧に確認。この配筋の精度によって、建物を支える基礎の強度に影響が出るので、重要な所です。
バッチリ!
続いて、コンクリートの基礎にライフラインの管が通る穴を設けておくための作業。浄水や下水が通る管の位置に、同等の径の管をいわば仮設置します。コンクリートが固まった後にこの管を除去すれば、その部分だけ丸く穴が残るというわけ。
管の設置完了!
いよいよコンクリートを流し込みます。
第4回 息を合わせて
葉山の海からほど近い堀内ヴィレッジ。
快晴の今日、A棟の基礎打設工事がいよいよ行われます。
スケルトンハウスの基礎は、ほとんどがシンプルな田の字型です。そもそも建物の形が、短辺を5.4mに固定した長方形のボックス型という規格。その理由は、スケルトンハウスが、どんな人でも使いやすい形の「箱」をつくるという考え方だからです。
頑丈で長持ちするシンプルな形の箱(躯体)なら、もし住まい手が変わったとしても、内部をまたスケルトンに戻し、新しいライフスタイルに合わせて内装や間取りを変化させながら、箱自体を住み繋いでいくことが容易です。
また、シンプルな形にすることで、材料や工程の面でも様々な無駄を省くことができ、結果、工期の短縮や材料のコストダウンも図れます。
このように合理的な考え方に基づいてつくられているのがスケルトンハウス。基礎も同様です。
均等な幅になるように固定された枠組み。この中にコンクリートを流し込みます。
基礎打設には2台の大型車両がペアで出動します。
1台はコンクリートを練りながら供給するタンクローリー。あの荷台のタンクがぐるぐる回るやつです。
もう1台は、そのコンクリートを吸い上げて管から排出するポンプ車。コンクリートの重さや勢いで車体が転倒しないよう、車両の横にアームを出して、しっかりと地面に固定します。
この2台がお尻をくっつけ合うように陣取って、いよいよコンクリートの流し込み開始!
コンクリートの流し込みも2人がペアになって進めていきます。
ポンプ車のホースをしっかりと支えて、枠組みの中にコンクリートを流し込んでいく職人さんと、その傍らで、ドリルのような振動を与える機械で流し込まれたコンクリートを攪拌し、質が均一になるようにする職人さんです。
堀内ヴィレッジの樹齢200年のシンボルツリー「ソテツさん」も工事をじっと見守っております。
そして、流し込みが終わった後は、左官の職人さんの出番。
小さなコテを使って、基礎の上面がきれいに平らになるように整えていきます。手作業なんですね~。
こんなふうに、基礎ひとつとっても、やはり職人さんたちの丁寧な仕事が幾重にも積み重なって、最終的な仕上がりに効いてくるんだなと感じます。
第5回 青空を行く舟
真っ青な晴天の空の下、いよいよ葉山町堀内ヴィレッジA棟が、上棟の日を迎えました!
早朝から職人さんたちが多数集結し、基礎だけだった所へ、1日で家の骨組みを立ち上げます。きびきびと、阿吽の呼吸で、驚くようなスピード感で家が形作られていくこの日は、家づくりの工程の中でもワクワク感いっぱいの特別なイベント。
ご自分の家を建てる時には、もし立ち会えるなら目に焼き付けたい1日です。
堀内の空に、材木がクレーン車で高々と釣り上げられました。
この堀内ヴィレッジA棟の敷地には、前面に電線があるため、それを跨ぎ越すようにして材木を建物の位置へ運ぶ必要があるのです。
青空に映える、黄色のシートで包まれた材木。
まるで、青空を航行する舟のようです!
家の骨組みがだんだんと出来てきました。
1階が出来上がり、次は2階。
日が西側へと傾く頃には、2階の骨組みも出来上がりました。
堀内A棟、無事に「上棟」しました!
第6回 外側と内側の楽しみ
無事に建て方を終えた堀内ヴィレッジA棟では、外壁にレッドシダーが貼られています。
貼った直後は、赤みがかった色で、木の表面に少し産毛のような毛羽立ちがあり、水分を含んで柔らかそうな感じ。近づくと檜系の清々しい香りがしてきます。
これが日光や潮風などに晒されて時を経ると、色はシルバーグレーへ変化し、質感も乾いた滑らかな状態になってきます。この変化を「経年美化」と呼んで、木の家はそこからがむしろ真の味わいだというファンも多いのです。
さて、建物の中では、床下や壁の中に断熱が施されています。スケルトンハウスでは断熱を重要視していて、かなりたっぷりと断熱を施します。建物全体の保温性・遮熱性を高め、冷暖房の効率を良くするためです。
見てください、このモコモコっぷり!
一方、2階ではフローリングを張っております。
床は面積が大きいので、良くも悪くも空間の印象を左右します。今回は細身の無垢のオーク材を乱尺張り(板の長さや継ぎ目をランダムに張るやり方)しています。
オークは色みや表情にも癖がなく、どのようなインテリアにも対応しやすい材です。板の幅を細身にすることで、間延びした感じのない引き締まった印象になります。規則正しく貼るともっと整然とした感じになりますが、海や山に近い葉山の、良い意味での「ラフ感」「抜け感」を残しました。
1階の奥ではお風呂やトイレなどの水回りの基本的な構造が出来てきました。海から歩いて2分ほどのロケーションにあるこの堀内A棟では、玄関からそのままお風呂に直行できるような間取りになる予定。
引き続き進捗をお楽しみに!
第7回 白黒はっきりさせないメリット
葉山の海から徒歩2分ほどの場所で進んでいる、スケルトンハウス堀内ヴィレッジA棟。建物の周りを囲んでいた足場が取れました!外壁も完成し、南東に向かって大きく開けた窓のガラスには、葉山の青空が写っています。
室内では下地の石膏ボードも張り終わり、塗装の前のパテ埋め作業。
塗装した時にツルッと均一な表面に仕上げるためには、このパテ埋めの精度が大事。職人さんがボードの継ぎ目やビス部分の凹みを、一つひとつ丁寧に施工していきます。
パテ埋めが終わった2階の室内。
イエローのボードにパテの白い跡が絵画みたいで、これはこれで面白いなぁといつも思ってしまいます。
そして塗装に入ります。
今回は、白ではない微妙なトーンのグレーをチョイス。
グレーというのはとても奥行きのある色で、はっきりとした白と黒の間には無数のグラデーションのグレーが存在します。
しかも無彩色のグレーもさることながら、そこへほんの少し、赤みや黄みや青みといった彩度のある色を混ぜることで、ほとんど無限とも言えるバリエーションが広がります。
今回は「暗さ」を感じさせず、かつ、インテリアのポイントとして入って来る「鉄」「黒っぽさ」「金属的な質感」を引き立てつつも調和するように選びました。
こちらが塗り終えた2階。
今回は手際の良さと抜群にきれいな仕上がりに定評のある腕利きの職人さんが塗装してくれました。
白ではない、微妙なグレーで出したかったニュアンスを、彼がちゃんと現実のものにしてくれました。
第8回 アイアン・アーティストの工房 - 葉山編 -
クリスマスイブの日、堀内ヴィレッジA棟に設置する建具やキッチンなどのパーツを制作していただいている葉山のアイアン・アーティスト橋本大輔さんの工房を訪ねました。
スケルトンハウス堀内ヴィレッジA棟のインフィル(内装)では、地元湘南を拠点に活躍する2人のアイアン・アーティストに、この家のポイントとなる部分の造作を依頼しています。スケルトンハウスは、家の構造をスケルトン(躯体)とインフィル(内装)に分けて考えることができるため、インフィル部分をさまざまな人とコラボレーションしやすいのが利点の1つ。
今回のインフィルを作っていただく2人のアイアン・アーティストのお一人は、葉山在住の橋本大輔さん。東京芸大で鍛金(熱した鉄をハンマー叩いて加工する技術)を学び、アート作品はもちろん、店舗や住宅の設計・施工まで幅広く手がける作り手です。
もうお一人は横須賀在住の堀場央(ほりばあきら)さん。もともとアパレル業界にいた堀場さんは、もっと洋服をかっこよく見せる什器が欲しい!と自分で作り始めたのをきっかけにこの道に入り、今ではさまざまなブランドから店舗のアイコニックな什器をオーダーされるまでになりました。溶接を用いた手法を得意としています。
堀内A棟は、店舗ではよく使われている「鉄」「金属」という素材を「住宅」にもっと積極的に取り込んでみようという試みがあります。しかも、この2人のアイアン・アーティストが、それぞれの得意な所を生かしながら「共作」することによってユニークな化学反応が起こるかもしれません。全員にとって初めてだらけのこの冒険、どんな展開になるのでしょうか?
この日訪れた橋本さんの工房では、堀内A棟に設置される「鉄の階段」の制作が行われていました。中央にある長い鉄の柱が、階段の「ささら」になります。
階段が床に接着する部分を、写真の奥に見える円盤状のグラインダーで切断したところ。
切り口がシャープ!
踏み板を設置する箇所には予め、取り付け角度やネジ穴の位置などの印をつけます。
そのためにその階段ごとの専用の三角定規を、鉄で制作しています。住宅によって階段の長さや角度は変わってきます。ささらの厚み、材質によっても。だから定規の形も異なるんですね~。
そして印をつけた位置にネジ穴を開けていきますが、まずは「下穴」を軽く作る工程から入ります。専用のドリルで、対象物に垂直に当てて穴を作ります。
橋本さんがヘッドフォンを装着したのですごい音がするのかと思いきや、意外にそうでもなく、「ヘッドフォンはいつもしてるから、してた方が落ち着く(笑)」と橋本さん。
それよりも、穴を開けるときの橋本さんの手つきのソフトさ、繊細さにビックリ!
素材は重厚で硬い「鉄」のはずなのに、まるでケーキとか真綿に触れているような調子なのです。
もっとガンガンやるのかと思っていたのですが…
「金属は木よりも後からの修正が効きにくいんですよ。少しのズレや歪みがいくつも重なっていくと、最後には大きくズレてもう戻せない。例えば金属のドアで1mm寸法が違っていたら大変なことになります。だから厳密さが要求されます。什器や家具の領域では、許容されるのは0.5mm以内じゃないでしょうか」
それゆえの、このソフトタッチだったのですね。
イメージが大きく覆されました。
工房見学は次回に続きます!
<金物制作>
ヴェルクスタット・ヴァル/橋本大輔
第9回 鉄にネジ山を切る
前回に引き続き、スケルトンハウス堀内ヴィレッジA棟のインフィル(内装)制作を依頼している葉山のアイアン・アーティスト 橋本大輔さんの工房からお届けします!
年の瀬も押し迫る中、橋本さんは鉄製の階段を制作中。
1本50kgもある鉄の柱を、階段のささらへと加工しています。
踏み板を留めるネジ穴を開ける作業に密着取材!
下穴を開けたドリルの刃先をより鋭いものに付け替えて、いよいよ本番の穴を開けていきます。
この機械の動力はなんと2馬力!
やはり硬い金属を加工する機械はものすごい力があるんですね。
下穴部分をドリルの真下に合わせてレバーを下げ、鉄柱を貫通させます。
ちなみに鉄柱は「生鉄(焼きを入れていない鉄)」で、ドリルは「鋼」。
「生鉄だから、柔らかいよ」と橋本さん。
そうでしょうか…? 十分硬いと思います!
穴を開けながら油を注ぎます。橋本さん曰く「刃がなまらないようにするため」とのこと。
穴を開けている最中には、摩擦で刃がかなりの熱を持ちます。その熱を油で冷まし、切れ味を保つことで、スムーズに貫通させるのです。もし途中で刃の切れ味が悪くなり、対象物と噛んでドリルが止まってしまったりすると、さきほどの2馬力の回転力が鉄柱の方へ伝わって、長い鉄柱ごと回ってきてしまうという危険があるのです。
「そうなったら死ぬよね(笑)」と橋本さん。
笑えません!
これが貫通した穴。
くっきりきれいに、踏み板の印の芯を通る位置にぶれなく開いております!
さすがの精度!
そして最後に、この穴にボルトが納まるようにネジ山を切ります。
これはなんと手作業。ボルトの径に合う専用の道具をセットして、ワインのコルクを抜く時みたいに回していくのですが、ボルトが垂直にはまるようにするには中心線と水平をぶらさずに行わねばなりません。
橋本さん曰く、指先の感覚だそう…。
そして、このようにきれいにボルトがはまるネジ穴が完成!
これを踏み板の数だけコツコツ繰り返していくのです。
物を作る人の仕上がりの想像力とそこへ向かう段取り力、そして実際に手を動かす時の集中力や感覚の繊細さにただただ尊敬の念を覚えた、貴重な1日でした。
橋本さんが触っていると、鉄がいとも簡単に形を変える柔らかい物のように見えてきます。
それは、橋本さんの持つ熟練の技術と、経験に裏打ちされた確かな自信によるものなんだろうと思いました。
仕上がりがますます楽しみになりました!
<金物制作>
ヴェルクスタット・ヴァル/橋本大輔
第10回 鉄階段の設置
葉山のアイアン・アーティスト橋本大輔氏の工房にて鉄製の階段は制作を終え、いよいよ堀内ヴィレッジA棟に取り付けられることになりました。
今日は、横須賀のアイアン・アーティスト 堀場央(ほりばあきら)氏も現場に入り、2人で共同作業です。
ん?
いつの間にか、かなり親しくなっているようですね!
「やはり作業を一緒に行うと、お互いの得意な所や、自分には持っていない領域などが見えて刺激になります。なるほど、そういうやり方があったのか!とか、逆に、自分はいつもはこうしてるよ、など言い合うことで勉強になっていますね。」とお2人。
なんだか素敵な化学反応が起こっているようです。
さて、鉄のささらは一方は床にボルトで固定し、もう一方は2階の床にボルトで留め付けます。
1本で50kgもあるささらを、2人が協力して設置。
ピッタリ!
収まりました!
先日の工房で橋本さんから寸法のズレについて「許されるのは0.5mm以内」と、金属は後修正が困難であることを伺っていたので、ホッとしました。
さすがはプロ。
こないだ開けたネジ穴と踏み板の印が付いております。きっちり芯食ってますね!真っ直ぐで気持ち良い!
1階の床には、出番を待つ踏み板たち。これを1段ずつ設置していきます。仕上がりは次回を乞うご期待。
第11回 鉄階段、設置完了!
葉山の堀内に建設中のスケルトンハウス。
海まで徒歩2分、主要道路R207まで30秒という好立地を生かし、「店舗兼住居」としても使える造りに仕立てています。
チャレンジはそれだけに留まりません。店舗の内装や什器制作なども手がけている湘南在住の2人のアイアン・アーティストに、今回のインフィル(内装)を共作していただくことになりました。
鉄や金属という素材は、店舗ではよく目にするものですが、それが「住居」の中に入り込んだ時、果たしてどのような存在感や振る舞いを見せるのでしょうか。「店舗兼住居」という今回のスケルトンハウスは、そのチャレンジを受け入れる絶好の箱かもしれません。
持ち味の異なる2人の作家の協業によって、まずはこの家の中でも特に存在感のある「鉄の階段」が設置されました。
鉄柱のささらに鉄の踏み板をボルトで留め付けた、ストレートな「鉄砲」と呼ばれるタイプの階段です。なんだかそれだけで一つの世界観を表現しているアート作品のようにも見えますね!
白に近い明るいグレーの壁に、鉄のブラックと重厚な質感が映えます。よく見ると、踏み板には縁に小さな穴がいくつも開けられていて、夜には照明の光が透過し星のように見えそうです。
葉山のアイアン・アーティスト橋本大輔さんにこの階段を設置する時に最も気を遣うポイントを尋ねてみると…
「階段の設置の手順としては、まず壁側のささらから取り付けます。次に反対側のささらを取り付けるのですが、この時、幅と高さ、並行をきっちり合わせないと、踏み板が付かないんです。そこは慎重に寸法を取りながら進めますね」
当たり前のようですが、踏み板の幅とささらの幅が数ミリでも違っていたら、踏み板が嵌らないか、すっぽ抜けるかしてしまいますし、左右でネジ穴の高さが違っていたら、踏み板が斜めになってしまいます。
口で言うのは簡単だけど、これ、すごく難しそう~!
この鉄の階段は1階の土間の中央あたりに設置され、玄関ドアを開けると、階段を下から見上げる形になります。
迫力ある!
そしてこの階段を上りきったところには、葉山の青空と緑に向かって大きく開かれた窓とバルコニー。2階はリビング・ダイニング・キッチンがまとまった大空間になる予定です。
1月中旬には、オリジナルキッチンユニットなどが設置される予定。次回はまさにそのキッチンユニットを制作中の、横須賀にある堀場央(あきら)氏の工房よりお届けします!
第12回 アイアン・アーティストの工房 - 横須賀編 -
新年が明けて、葉山ヴィレッジ堀内A棟に鉄の階段が設置されてから数日後、我々は佐島マリーナの近くへと車を走らせました。
向かうは横須賀のアイアン・アーティスト 堀場央(ほりばあきら)氏の工房です。
昨年の暮れに、葉山の橋本大輔氏の工房で鉄階段の制作を見学させていただき、ものづくりの奥深さや鉄という素材の面白さを教えていただいた我々。
今回はどんな世界が待ち受けているのか、非常に楽しみです!
こちらが堀場さんの工房!
床は土間、天井を抜いた天高のガレージのような空間に、多種多様な道具や材料や作品などがぎっしり。
まさに「男の道具箱」といった様子です。
かっこいいですね~!
壁には棚やバーをカスタマイズして、材料や道具を収納。
ラフに置いてあるようで、ちゃんと種類別やサイズ別になっている所が、実際に使ってるんだなって感じがしてグッときます。
鉄のパイプや板を切断するグラインダーです。
この無骨な、荒削りな顔!
「工業」を感じさせる機械類のハードさときたら!
無造作にかけられた作業用の前掛けやヘッドフォン、マスク…本業の中で使い込まれた物だけが持つ、重さのある存在感や生命感みたいなもの。それは出そうと思って出せるものではなく、まさに「宿る」というのがふさわしいかもしれません。
壁際のヨットの置物や、砂の入ったメッセージボトル、船の舵などが、ここが佐島の海に近いことを思い出させます。いろんな要素があるのに、どれもが時を経たり、使い込まれたりしているから、一つの世界観の中に調和しているんですね。
「いつかは古道具の店なんかも、やれるといいなと思ってるんです」と堀場さん。
もともとアパレル業界にいて、洋服をもっとかっこよく見せる什器が欲しい!と自らアイアンで作り始めたのがこの世界に入ったきっかけ、という変わり種のつくり手。だからこそ、素敵なものを見つけ出し、見極めるセンスも抜群です。
おっと!
かっこいい物がいっぱいある工房に気を取られすぎて、本題の「堀内A棟に設置する鉄のキッチンユニット」のご紹介がまだでした。
次回に続きます。
第13回 鉄のキッチンユニット
前回に続き、横須賀市佐島にあるアイアン・アーティスト 堀場央(ほりばあきら)氏の工房からお届けします!
ここでは今、堀内A棟に今月設置する予定の、オリジナル・キッチンユニットの制作が堀場さんの手によって行われています。
今日はその途中の段階での打ち合わせ。
鉄のパイプを組み合わせて作ったキッチンの脚の部分があらかたできているようです。
「店舗兼住居」にもなるスケルトンハウスとして建設中の堀内A棟では、「鉄」「金属」という素材を「住宅」に持ち込んだらどんな空間になるのか?という試みを行っています。これらの素材は「店舗」では多く用いられるものですが、住宅ではここまでむき出しのマテリアルのまま使われることは一般的にはあまりありません。
素材としての鉄パイプは、当然ながらこのような長いままの状態で届きます。これをグラインダーで切断して、まずは1本1本のパーツとして切り出すところから作業が始まります。
こちらは鉄パイプの接合部に使うジョイントパーツ。
鈍色に光ってる感じが、良いですね~!
こうしたパーツたちを溶接しながら、組み立てていくのです。
溶接は堀場さんのものづくりの中心にある手法の一つ。
今や名だたるアパレルブランドからオーダーが来る、ヴィンテージ加工のハンガーラックや、ガラスをはめ込んだ格子の窓などを作る時にも、溶接は欠かせません。
今回堀場さんが行っている溶接は、放電(アーク)による熱で金属を溶かして接合する方法です。鉄の融点は1500℃くらいなのですが、この放電で発生する熱は10000℃を超えると言われます!
「太陽を直接見ちゃダメって言うでしょ、目がやられるから。これも同じですよ」
りょ、了解(汗)!
今回の堀内Aのキッチンユニットでは、鉄パイプの接合部に溶接の痕を見ることができます。下の写真のジョイント金具とパイプの境目に盛り上がったような痕がありますね。脚の上に載っている鉄枠の角の辺りは、溶接の痕を磨いて平らにした状態。
盛り上がった痕をそのままにすると、ラフな印象に。磨いてフラットにすると、パキッと上質な印象になります。
今回のユニットでは、天板を水平に載せるために溶接の痕の凹凸を磨いているわけですが、手作業で磨いていく際にどうやったら水平に削れたと分かるんですか?と堀場さんに尋ねると、
「カンです。微妙な感覚で」
とのこと。
うーん、ここでも橋本さんから聞いたのと同じ答えが!
この方たちの指先って、コンマ数ミリの差異も感知できるんですよね。
ただただ、すごいなぁと…。
この鉄製のキッチンユニットの制作はこの後も進められていきます。
全貌は、もうしばらく後のお楽しみ!
第14回 家の中にフェンス?
★2016年2月6日(土)7日(日)オープンハウス開催決定!★
参加お申し込み:info@enjoystyles.jp
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葉山の海からほど近い堀内に建設中の、「店舗兼住居」にもなるスケルトンハウス。今回の内装(インフィル)は、地元湘南エリアを拠点に活躍する2人のアイアン・アーティスト、橋本大輔さん(葉山)と堀場央さん(横須賀)に制作をお願いしています。
「鉄」という素材は同じでも、バックボーンや制作のアプローチは全く異なる橋本さんと堀場さん。しかも今回は、別々に違う物をオーダーしているのではなく、一緒に一つの居住空間を作り上げてほしいという依頼をしています。
最初は「すべてが初めてのチャレンジで、どうなることやら想像がつかない」とおっしゃっていたお二人ですが、いざ制作が始まると、さすがはモノづくりのプロ。互いの得意な領域をうまく図りながら、役割分担したり協業したりと、もう阿吽の呼吸です。
そんな中、今日は葉山の橋本さんの工房で、二人一緒に制作すると聞き、取材に駆けつけました。
この日制作していたのは、家の中に設置する「鉄のフェンス」です。
まずは作業の分担や段取りを打ち合わせから。
こういうのを作ります。
フェンスといえば庭の周りを想像しますが、今回のフェンスは、例えば工場などの階段脇に転落防止のために付いていそうな感じのやつです。堀内A棟では、先日設置した鉄階段を登ったところにある2階に取り付ける予定。
材料は、平たい鉄の棒と、エキスパンドメタルという網状の鉄。
一気にインダストリアルな雰囲気!
橋本さんは、枠を作ってその中にエキスパンドメタルを接着させた「枠付きの網」を3枚作ることになったようです。
金属の場合は、例えば木などの素材に比べると、後で補正することが難しく、コンマ1ミリ単位で厳密さが要求される、と以前の見学でおっしゃっていた橋本さん。加工に入る前に、まずは電卓片手に各所の制作寸法をしっかりと計算します。
そして、高速のグラインダーで鉄の棒を切断!
火花が飛んでます!
この切断機、厚み10cmくらいの鉄でも、スパッと切れてしまうそうです!
こ、こわい。
次回は鉄フェンス後編!
第15回 フェンスの向こう側
★2016年2月6日(土)7日(日)オープンハウス開催決定!★
参加お申し込み:info@enjoystyles.jp
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引き続き、葉山の橋本大輔氏の工房より、2人のアイアン・アーティスト協業の様子をお届けします!
グラインダーで鉄の棒を切る橋本さんから少し離れた所で、横須賀のアイアン・アーティスト堀場さんは、切断後の鉄の棒に何やら加工をしているようです。
それにしても二人とも工房に一体化するような迷彩色で、写真の中からうっかり見失いそう(笑)
堀場さんが使っている道具は「センターポンチ」という物で、金属の表面に穴などを開ける際に、これで位置の印をつけるのだそうです。名前もですが、見かけも意外に可愛い道具…。
印を付けた位置に、ドリルで穴を開けていきます。鉄の階段の時と同様に、この後、穴にネジ山を切ってボルトが入るように加工します。1つ1つ手作業でネジ山を切っていくんでしたよね~!
堀場さんが作っているのは、橋本さん担当の3枚の枠付きフェンスを横に並べて合体させ、1つの長いフェンスに仕上げるための、大外の枠。
このように、私たちが見るデザイン画や図面と、出来上がった実物との間には、想像をはるかに超えたたくさんの工程やそれに費やされる時間、技術力、集中力、エネルギーがあるものなんだなぁと、工房見学を経てようやく認識できた気がします。
そこにはさらに、図面には書かれていないような、作業中のちょっとした気遣いや、微妙なコツや、仕上げの精度に対するつくり手自身のこだわりといったものも加わっているに違いありません。
本物、とはこのような物のことを言うのですね。
集中の合間のブレイクタイム。
何事もメリハリが大事。
そして、綿密な作業の積み重ねによって完成したフェンスがこちら!
すごい!
初めはただの鉄の棒と網の切れ端だったのに。
立派なフェンスに仕上がりました。
エキスパンドメタルの端は網目の切り口の数だけ1つ1つ溶接して内枠に接着してあります。そして、その内枠を大外の枠に溶接で固定。この余計なことをしていない(ように見える)無骨な様が、一層「インダストリアル」感を出してますね!
この存在感のあるフェンスが家の中に設置された時、どんな風に見えるのでしょうか?
取り付けが楽しみです!
第16回 鉄のランプシェードの作り方
★2016年2月6日(土)7日(日)オープンハウス開催決定!★
参加お申し込み:info@enjoystyles.jp
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2人のアイアン・アーティストが作るスケルトンハウス堀内A棟のインフィル(内装)。
今日は、2階のダイニングに設置予定のアームライトの制作の様子を、葉山の橋本大輔氏の工房からお届けします。
左が完成に近い形にまで加工されたランプシェード。右の白い円グラフみたいなものは、そのシェードの型紙です。
1枚の平らな鉄板に型紙を当てて、この形に切り出します。
その鉄板を砂袋の上に置いて、木槌で叩きながら傘の形へと加工していきます。なんと、手作業なんですね!
橋本さんが大学時代から習熟してきたのが、このように鉄をハンマーで叩いて整形していく「鍛金(たんきん)」と呼ばれる手法です。
これは「アンビル」という道具。ランプシェードの継ぎ目の部分など、砂袋では十分に整形の支えができない箇所は、この先端のRに対象物を当てて叩き、形作っていくそうです。
いろんな道具があるんですね~!
そして、これが整形が終わったランプシェード。きれいな円錐状になりました。
しかし手作業で叩いて、こんなにピシッと継ぎ目が一致するって、すごいですよね!むしろ継ぎ目が合う方が不思議に思えます。これがやはり常人にはない「ワザ」ってやつなんですかね~。
この継ぎ目の所は溶接でくっつけるそうです。
シェード以外のアーム部分などは鉄パイプを使って作る予定。室内への取り付け方も含め、一般的なライトとは一味違うものになりますよ!
その様子は後日をお楽しみに。
第17回 いよいよアイアンの取り付け!
月上旬の完成内覧会に向けて、追い上げムードの堀内A棟。いよいよ外構も始まりました。
今回の堀内A棟は、「店舗兼住居」にもなるというコンセプトのスケルトンハウス。その理由もあって、建物の前面を広く取り、駐車スペースとしてはもちろん、例えば晴れた日には屋外のテラス席で…なんていうこともできるようにと考えています。そんなことも視野に入れながらの今回の外構を担当してくださるのは、YARDさん。
こちらも楽しみにしつつ、室内ではいよいよ、2人のアイアン・アーティストによる鉄の造作や設備の施工が山場を迎えています!
先日、葉山の橋本大輔さんの工房にて制作した鉄のフェンスが、階段の上に取り付けられようとしています。歪みが生じないように差し金を当てつつ、床面に固定していきます。
こちらは、キッチンとリビング・ダイニングの仕切りとして設置する棚。鉄パイプと足場板という王道の組み合わせで制作しました。
足場板に対して鉄パイプが細めなのと、角の部分にRが付いているので、いかつくなり過ぎていないのが良いですね!
ステンレスや鉄の鍋、土っ気を感じる厚手の器など、見せる収納でザクザク置いてみたい!
横須賀の堀場央(ほりばあきら)さんの工房で拝見したオリジナルのキッチンユニットも設置されています。見学に行った時にはまだ脚だけでしたが、天板やシンクが付いてキッチンらしくなっていました。
この白い天板は「モールテックス」という新素材。セメント系の薄塗り左官材です。一見するとモルタルのような質感でありながら数ミリという薄い塗膜で防水性に優れ、ひび割れにも強いという優れもの。モルタルの場合は数cmの厚みが必要で、そのために重量が非常に重くなったり、施工する場所にも制限がありますが、モールテックスの場合は、このように天板などさまざまな用途が広がります。
しかも、色のバリエーションも豊富で、グレイはもちろん白や青や赤など何十色もの中から選ぶことができます。
鉄パイプを加工して作った脚にはダボ穴があり、引き出しや棚の高さを好きなように変えられるのもポイントです。先ほどの棚と対になったデザインで、同様のユニットを足すことで拡張していくこともでき、キッチンとしてはもちろん、デスクや収納など多彩な使い道が考えられます。
堀内A棟の主役となるアイアンの施工はまだまだ続きます!
第18回 滑車のある鉄の引き戸
湘南エリアを中心に活躍する2人のアイアン・アーティスト 橋本大輔さんと堀場央(ほりばあきら)さんによって、葉山ヴィレッジ堀内プロジェクトA棟の内部では着々とアイアン造作の施工が進んでいます。
この壁に立てかけてある黒い板は、鉄の引き戸。
この家の1階の一番奥にある浴室・洗面所の水回りと、手前の店舗にもなることを想定した大空間との間を仕切るドアです。
この引き戸には、上部に鉄の滑車が付いています。天井付近にレールを設置し、そこから吊り下げる形で取り付ける予定。
機関車の車輪みたいで可愛いですね!
鉄ならではの魅力が出ています。
そしてこれが、引き戸の取っ手。
この模様!
すでにアート作品です。すごい存在感。
一体どうやって作るんでしょうか?
橋本さんに尋ねてみると…
元は六角形の鉄の棒を、バーナーで部分的に真っ赤に熱し、柔らかくなったところで捻って整形していくそうです。
この縞模様は、六角柱の縁だったんですねぇ!
いやぁ、それにしてもこんなにきれいに捻れるものなんですね。
「こういう風に、線と線が同じ幅になるように捻るのが難しいんですよ」
と橋本さん。やはり熟達した技術あっての、この完成度なんですね。
黒い鉄の引き戸に取り付けた時にどんな風に見えるか楽しみです!
第19回 鉄の引き戸が付きました!
前回に引き続き、滑車のついた大きな鉄の引き戸を2人のアイアン・アーティストが取り付ける様子に密着!
まずは引き戸が閉まった時に当たる部分に、鉄柱を取り付けます。予め工房で寸法を測って切断してきていますが、実際の現場で当ててみると、若干の補正が必要なこともあります。今回も数ミリですが、現場で火花を散らしながら削って、無事におさまりました。
垂直になるように細心の注意を払い、留め付けていきます。
次に、引き戸の上部の滑車を受けるレールの取り付け。
こちらも水平器を当てて、真っ直ぐになるよう施工していきます。
そして、ゆうに30kg以上はある鉄のドアを2人がかりで設置。もし床や周囲の壁などにぶつかると、重たくて硬い鉄製ですから、たやすく相手がえぐれてしまいます。360°に注意を払って慎重に…!
ついに鉄の引き戸がレールに乗っかりました!
動きもスムーズ。離れたところからも見て、水平に動いているかチェックします。
それにしても、やはりこの鉄のドア、異彩を放ってますね!今回の堀内A棟のインテリアの中でも、特にアイコン的な存在です。
引き戸は最後に網入りガラスをはめ込んで完成ですが、この時点で、それまで一続きだった空間にこのドアが架かったことにより、あちら側とこちら側に空気がはっきりと分かれました。ドアの向こうの世界が神秘的な感じ。この重厚さが、一層そのように感じさせるのかもしれません。
設置の山場を越えて、この鉄の引き戸を改めて眺めながらお二人が同時に呟いた言葉は、
「こりゃあ、『店舗』だね」
確かに。この住居らしからぬ雰囲気、一般的にはなかなか無いかもしれません。
「大丈夫なの?こんなのやっちゃって(笑)僕らは思いっきりやれて嬉しいけど」
と堀場さん。
もちろん、大丈夫です!
こういうのが良い!というお客様が必ずいらっしゃいますから。
住居は住居らしくしなければいけない、なんて誰が決めたんです?
そもそも、住居らしいって、店舗っぽいって、何でしょう?
スケルトンハウスは、住まいをもっと自由に考えるためにあります。そんな可能性を、2人のアイアン・アーティストが手がけたこの堀内A棟で、ぜひたくさんの方に感じていただきたいと思います。
待ち遠しいオープンハウスは2/6(土)、7(日)。詳細&お申し込みはこちらから。
*葉山ヴィレッジ堀内プロジェクトA棟 完成内覧会
完成まで残すところ2週間を切りました。仕上も最終段階に入ります!
第20回 枕木の外構
2/6,7にオープンハウスを控えた堀内ヴィレッジA棟では、最後の山場、外構工事の真っ最中!
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*オープンハウスの詳細はこちら
実は「外構」って、家の印象を大きく左右する要素でもあるんです。
家づくりのプランを詰めている時、ついつい間取りや設備、インテリアのことで「頭の中も予算ももう目一杯!」となりがちです。もちろん、それでもOKです。外構や庭づくりは住み始めてからゆっくりやっていくこともできますから。
でも、今回の堀内A棟では、外構もちょっとだけでもやっておくと、印象も住み心地も違ってくるよ、ということを感じていただけるように手を入れています。
今回の外構を手がけてくださるのは、ランドスケープデザイン&施工の「YARD」さん。葉山を起点に、都内はもちろん全国的に活躍されており、ハイセンスなアパレルブランドのライフスタイルショップでも、YARDさんの寄せ植えが商品として人気を集めています。
*YARD
そんなYARDさんには、昨年の春にこの堀内ヴィレッジのシンボルツリーである、樹齢200年超の巨大なソテツさんを移植していただきました。
横綱級のこのソテツさんをクレーンで吊り上げての大移植。青空を飛ぶソテツさんの姿が今だに目に焼き付いております。
*空を飛ぶソテツさんの画像は堀内ヴィレッジB棟ブログ「第8回 200歳の飛翔」にて
堀内ヴィレッジは、ちょうど「J」の字を逆さにしたようなユニークな地形。B棟はもちろんですが、A棟もあえて敷地の奥に寄せて建て、道路に面した前を広く開けています。ここは2棟分の駐車スペースとなることはもちろん、もともとこの地にシルバーアクセサリーの可愛らしいショップがあったという事実が示す通り、店舗も営業できる好立地を踏まえて、たとえば家前のスペースにバルコニーからタープを張ってテラス席を作ったりもできるようにと考えてのことです。
元の土を表面から一定の深さまで取り除き、そこへ枕木を格子状に埋め込みました。マス目の1つ1つにはグレーの砕石を詰めます。ここにコンクリートを流し込むパターンもよく見かけますが、そうすると枕木とコンクリートの境目に水が溜まって、枕木が腐食しやすくなる場合があります。堀内ヴィレッジは海まで歩いて2分と近いため、砕石にして雨水を浸透させ、近隣の雨水とともに自然に海の方へ流れるようにしておいた方が、この土地の性質に合っている、とのYARD 梅津さんの判断です。
詰めた砕石の上から圧力をかけて、しっかりと押し固めていきます。これで平らにならすとともに、枕木が動いたりしないように固定します。
時を同じくして、その他の植栽たちも到着。これらは家の前にあしらわれます。
そして、特別に注文した「パレット」も届きました!これは一体何に使うのでしょう?
次回はいよいよ、オープンハウス前日!
第21回 【最終回】いよいよオープンハウス前日!
完成後の様子をプロカメラマンの美しい写真でご覧ください。(Photo by 東涌宏和)
*WORKS 10「2人のアイアン作家がつくる家」/エンジョイワークス一級建築士事務所 スケルトンハウス事例
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外構工事も無事に終わった、葉山ヴィレッジ堀内プロジェクトA棟。
格子に埋め込まれた深い色の枕木とダークグレイの砕石が、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
隣家との境目には春を待つ様々な種類の植物たち。家の玄関デッキの前にはジューンベリーの木が植えられました。今は葉っぱの1枚もなくて丸坊主なのですが、暖かくなれば葉を茂らせ、6月頃には名前の通り、食べられる赤い実をつけます。
*外構デザイン&施工:YARD
一方、家の中では、オープンハウスに向けてインテリアやディスプレイの準備中。
1階の床は大胆にも全面が土間です!
一見するとモルタルなのですが、今回は「モールテックス」という新しい左官材を使用しました。モールテックスは、一言で言うなら「薄くて割れないモルタル風素材」。木の板の上に3ミリほどの厚さで塗るだけで、限りなくモルタルと同じような表情になります。しかもひび割れしにくく、防水性にも優れています。カラーも数十色あり、このようなグレーだけでなく、水色や白、赤など好きな色にすることができるのも面白いポイント。
この一面土間という空間は、店舗としても使い易いですし、住居として使う場合にも、このラフな感じを生かして、例えばパレットを数枚組み合わせてマットレスを載せ、海外のSOHOのベッドルームのように仕立てるのもおしゃれ。
先日発注したパレットは、このためだったんですねぇ!
ベッドコーナーの壁には、横須賀のアイアン・アーティスト堀場央(ほりばあきら)氏の工房にあった鉄の枠を、制作風景の写真とともに飾ることにしました。
そしてこちらは1階の奥にあるバスルーム。この空間にもモールテックスを使いました。洗面所との境には、堀場氏制作のアイアンの格子窓も設置され、空間がグッと引き締まりました。海外のホテルみたいな雰囲気!
2階のダイニングスペースには、葉山のアイアン・アーティスト橋本大輔氏が木槌で鉄の板を叩いて整形したランプを設置。ランプシェード内の叩いた跡の凹凸に光が反射して、まるで銀河がそこにあるみたい。これに照らされる食卓は、否応なしに雰囲気のあるものになるでしょう。
1階土間のベッドコーナーの設置も大方終わりました。(木製の鹿がまだ笑)
2014年秋の古家解体ワークショップから始まった、葉山ヴィレッジ堀内プロジェクトもいよいよ完成。お披露目の日を迎えます。
*2/6(土),7(日)オープンハウス開催!詳細&お申込みはこちらから