BLOG「腰越A邸リノベーション「アクティブにつながる家」」
第1回 ナイスビューな家
シーズンにはたくさんのサーファーで賑わうサーフィンスポットがあり、朝採れの新鮮な海の幸が食べられる漁港もある、海の街、鎌倉市腰越エリア。
江の島も近く、商店街を走り抜ける江ノ電、そして、スラムダンクの聖地巡礼でも有名な鎌倉高校前駅など、人気スポットもあるこのエリアは、起伏ある地形に住宅街が広がっています。
地形を活かしてつくられた地下駐車場が備わった、見上げる佇まいが特徴的なこちらの中古戸建てをご購入されたAさんファミリー。
「家族が集まるリビング、みんなで料理できる、ゆったりとしたキッチンが理想なんです」
そんな新たな住まいのイメージを持ったAさんは、お子さんの成長も考えて、今の賃貸のお住まいから離れすぎないこのエリアで探し、ついに家族で暮らすイメージが沸く物件に出会いました。サーフィンもするご主人さまにとって海が近いことは、なお嬉しいポイントでした。2階の窓からどんな眺めが見られるのかも気になってワクワクします!
外部は、定期的な塗装がされており、築40年近いのですが比較的、良好な状態です。でも、断熱性を考えて窓の交換を行う、いいタイミングかもしれません。
南側に設けられている庭に面した1階の部屋には、あったかい太陽の光がしっかり届いて、明るい印象なので、家族が集まるリビング・ダイニングに適したプランができそうです。折り上げ天井は、設計士であった前のオーナーのこだわりの演出でしょうか。
奥の部屋との段差が気になるので解消して、さらに開口を広げて、より一体感を得たいところですね。
キッチンもリフォーム済みですが、ゆったりスペースでみんなで楽しくごはんをつくるには、やっぱり対面キッチンにしたい!そのためにはキッチンを配置変更できるかどうか、床下で配管ルートが確保できそうかの確認も大事なチェックポイントです。今回はキッチン付近に床下収納が設置されていたおかげで無事チェックできました。
玄関には、質感、サイズ、目地の感じがとっても素敵なタイルが貼られているじゃないですか!これを活かさない手はないですね。前のオーナーに聞いたところ、海外からの輸入品だったとのこと。ここも設計のこだわりポイントだったのでしょう。既存の面影を残せるリノベって、ふとした時にストーリーを思い出せていいですよね。
さいごは気になった2階からの眺望です。訪れたこの日は冬の澄んだ空気のおかげで、富士山を拝むことが!さらには江の島も見事に見渡せるなんて、周囲より高くなっている土地のおかげでどちらもナイスな眺めです。
江の島の花火が待ち遠しくなっちゃいますね。ここは部屋として区切ってしまうのは、もったいないので家族で共有できるスペースが良さそうです。
可能性が散りばめられているこの住まいが、Aさんの想いと弊社の設計によってどのように変貌を遂げていくでしょうか。
解体後の状態も気になるのがリノベーション。引き続きレポートしていきます。
第2回 解体が教えてくれること
リノベプランの打合せも回を重ねていく中で、間取りを変えていく方向性となったA邸。そこで必ず考慮しなきゃならないのが、既存の家の骨組みとなっている「柱・梁・筋交い・基礎」などの重要な部位。
ただ、大事なところは仕上げ材を壊してみないと完全に明らかにならないのが、築年数が経っているケースで、既存図面も無い場合のリノベでは悩ましいところ。
特に今回のプランでは、〝LDKやお子さんの部屋の間仕切り壁の位置の変更″、〝水廻りの位置の変更″、〝吹き抜けの新設″といった内容がとっても大事なポイントで、これらが実現できるかどうかで暮らしの快適さが左右されると言っても過言ではありません。
そこで今回は、間取りや窓の位置を固めた段階で、天井・床などの仕上げ材を先行解体し、重要な部位の配置を確認したうえで、プランを確定していくという流れをとりました。
先行解体により、どんなことが明らかになるか見ていきましょう。まずは2階の部屋の天井から解体開始です!
2階は天井(黄色着色箇所)を解体するとまず、屋根の小屋組みに目がいきますよね。家ごとで組み方もさまざまで、当時の大工さんたちの考えが伝わってくるものです。小屋組みから少し目線を下げていくと、天井裏となっていた部分が表れていますね。ここが今回確認したい「柱・梁・筋交い」です。これらが解体前の想定と一致しているかどうかのチェックを全箇所おこなっていきます。
続いては1階です!1階は天井だけでなく、床仕上げも解体していきます。
1階も2階と同様に、柱・筋交いの位置チェックです。そして特に「梁の架け方・梁の高さ(梁せい)」、「基礎の配置(通り)」の確認がより重要なポイントです。
間仕切り壁の位置を変更するには、梁をこれまで支えてくれていた柱を撤去するケースも大いにあります。今回も柱の撤去、それに伴う〝梁補強″が必要なことが明らかになりました。さっそく、現場監督さんたちとプランの実現のための作戦会議の開始です!
既存の梁を柱に代わって新たな梁で支えることが今回のプランでは必須な為、新たな梁の方向、梁の高さ、さらには新規の梁をどうやって支えるかといったような検討が実は現場では行われているんです。
基礎の配置も重要で、筋交いを設ける壁には基礎があることが前提なので、既存を活かせるのか、新規で基礎を設ける必要があるのかどうかを確認していきます。
これらは家ごとで異なる状況・条件なので、既存にどう対応していくかの検討はリノベーションならではと言えますね。
さいごに吹き抜け計画位置の確認です!紫色に着色した範囲が吹き抜けとなる箇所で、リビングとなる部屋の上部にあたります。主要な梁が架かっていなかったので、ひと安心。
吹き抜け部の2階には窓を計画しているので、明るく、伸びのある空間になるのが楽しみです。さらに吹き抜けは1階と2階を縦方向で繋げてくれる役割もあるので、家族の気配も感じやすくなるものとなります。
リノベプランの決定も見えてきて、計画も大詰め。引き続き工事の進捗をお伝えしていくので、乞うご期待を!
第3回 何ごとも下地が大事
プランの最終決定を目的に先に天井と床の解体を実施したA邸。
先行解体のおかげで、無事プランも決定しました。全体のコストバランスも考えて、1階のリビング・ダイニング・キッチンそして水廻りを優先し、2階の各部屋は既存の骨格をできるだけ活かしつつ、吹き抜けを実現させ、1階からのつながり、家族の気配を積極的に感じられるものとなりました。
いよいよ解体も本格的に開始です。
壁が残っていた1階も2階も手際の良い職人さんたちの作業によってあっという間にスケルトン(骨組み)の状態に!
そして現場監督さんたちと作戦会議をした1階の梁補強も解体後、早急に実施されました。
見てください!大きな梁たちの数々!
梁で梁を支えるためには、立派なサイズのもので受けとめていく必要があるので、新たな梁たちが行き交っていますね。
梁補強によって、プランに影響が出てしまう柱を除くことができたメリットの一方で、
デメリットを挙げるとすれば、新規の大きな梁の部分が、他の箇所より天井が下がってしまうということ。
人の頭が当たるほど下がることは今回ありませんが、意匠面や配管のルートなどに影響を与える要素になるので、ココが間取り変更が伴うリノベの注意点のひとつなんです。
解体後は水廻りの新たな位置への水やお湯、排水などの配管作業や、コンセントやスイッチ、照明器具までの配線作業が行われ、その後、床の下地作業という流れが一般的。足元を安定させることで作業性も向上するといった意味合いも工事順序には隠されています。
既存の家のつくりやプランも千差万別で、解体してびっくりもあるリノベ工事を進めてくれている職人さんたちは、いつもすごいなぁ~って現場で実感です。
床下地の後は壁の下地と天井下地作業が進み、間取りが把握できる状態に向かっていっています。日中は陽射しが掃き出し窓から入ってきて、LDKがとっても気持ちの良い空間になるのがより一層、実感できますね。
さらに写真奥にある吹き抜けの範囲も分かりやすくなりましたよ。
ここが吹き抜けとなる範囲です!いよいよです!
2階にある窓からも太陽の光が差し込んで、リビング空間の気持ちよさを高めてくれること間違いなし。
次回には、吹き抜けができた状態をお伝えできる予定なので、お楽しみに!
この後は、ボード材や、床材が張られていきます。
第4回 見えないところの大切さ
LDKのサッシの交換も完了した現場では、ガラス面が大きくなってより居心地が良さそうな空間になる気配にあふれていました。大工さんの考え中の後ろ姿が絵になったので、思わず写真をパシャリ!
下地の木材もほぼ設置が完了し、いよいよ石膏ボードを設置していく段階を迎えました。
と、その前に大事な、大事な断熱材の設置が必要です!
仕上がってしまうと目に見えないもので、普段の生活で意識することも少ないですが、建物においては、性能面で大切な役割を担ってくれるものです。
既存の状態もそうでしたが、築年数が40年近く経過していると、以前の断熱材(グラスウール)は湿気を含み、性能が落ち、カビが生えたりして、効果を発揮しづらい状態になっていることが多いんです。
断熱材の交換は部分的なリフォームではなく、リノベーションのタイミングこそ実施をオススメする工事項目のひとつですよ。
A邸でも断熱材の交換を小屋裏、壁、床下でしっかり実施しました。
そしていよいよ石膏ボードを天井・壁に設置で、下地工事は完了に向かいます!
線状の下地が面状になる場面も、現場で実感すると印象的に感じられます。
待ちに待った吹き抜けも、無事にかたちとなり、見下ろしても、見上げても、気持ちの良いものとなりました。
吹き抜けの手すりも改めて現場監督さんと確認です!
この日はあいにくの雨模様でしたが、壁2面に以前よりもサイズを大きくした窓が2階だけでなく、1階のLDKにも光をもたらしてくれるのが楽しみです。
家族の気配が感じられる要素もこのリノベーションで加わり、開放性も増したA邸のリノベーション、いよいよ、仕上げ工事や造作キッチン・洗面化粧台などの設置がはじまります!
第5回 重みをプラス
大事な下地工事が完了したA邸。いよいよ仕上げ工事の開始!
まずは床からです。
無垢で幅広のパイン材のフローリングは、大らかさと足で感じるやさしさが魅力的。
今回は無塗装品を張り、現場でオイル塗装を施していきます。
職人さんがオイルを塗っては、拭き取り、塗っては拭き取りを黙々と進めていました。
オイルは濃い目のブラウンをチョイスし、重厚感をプラス!
フローリング表面の保護だけじゃなく、印象もガラッと変えられるので、
部屋の雰囲気を印象付ける床の色味は大事ですよね。
吹き抜けから見下ろすとなおさら違いがハッキリして、塗り進んでいく様子を見ているのが楽しいです。
造作のキッチンの木部でも同じ色のオイルを塗装するので、一体感を生むようなプランにできるのも良い点。
床のオイル塗装が完了すると養生して、壁や天井の仕上げへと進んでいきます。
A邸の仕上げは塗装の箇所とクロスの箇所があって、石膏ボードへのパテ処理後に行うのはLDKの壁塗装。
ビニルクロスには出せない、光が当たった柔らかい質感は塗装仕上げの特徴ですね。
真っ白過ぎない落ち着いたホワイトが気持ちいい空間にしてくれます。
この日は太陽の光も強すぎず、窓から入る光ができたての手すりを照らしてくれてました。
塗装以外の仕上げには、ビニルクロスではなく珪藻土クロスを用いるので、貼り進んでいくのが楽しみ、楽しみ!
第6回 醍醐味を再実感
現場に確認で行くたびに仕上げ工事が進み、造作キッチンも据え付けられました。
LDKのこだわりポイントのキッチンは現場でモールテックスで最後の仕上げが待ち構えているので楽しみです!
モールテックス作業までは養生で守られています。
塗装作業後にはクロス貼り作業が進み、いよいよ完成が近づいています。
クロスはビニルクロスではなく、
内装メーカーの東リの「アースウォール」という名称のクロスを今回は使用しています。
このクロスの特徴は、表面に珪藻土が施されていて、ビニルクロスにはない質感が魅力です。
吹き抜け部の窓からの太陽の光が珪藻土の質感の壁に伸び、
反射することで1階のLDKの居心地の良さを増してくれています!
そして2階の窓の先に見えるもの、分かりますか?
ちょっと写真では分かりにくいかもですけど、富士山!
秋から冬の空気が澄んだ季節には冠雪した富士山が見えて、清々しい気持ちにしてくれるんですよ。
2階はアクセントとなるブルーの色が入って、特徴づいた壁となっています。
床の養生をとって早くパインの無垢フローリングと合わさった状態もみたいところ。
あと、ポイントはドアがほとんどないこと。
トイレや収納を含めると5つの空間に分かれているのですが、ドアはトイレの1か所のみ。
1階のLDKから吹き抜けを通じて2階の奥の部屋まで繋がっているんです。
家族の気配を積極的に感じられる、そんな狙いが込められています。
下地の状態で据え付けられた造作キッチンにモールテックスや塗装の仕上げが行われました!
グレーのモールテックスと床と同じ色で着色した木部の相性もいいですよね。
カウンター部は一般的なキッチンよりも奥行をとり、ダイニング側をへこませ、
向かい合って親子で料理するという点もAさんがキッチンで叶えたいことでした。
さいごに玄関に向かって1枚。
覚えてますか?
前の住まいのオーナーがこだわったイタリア製の壁のタイル。
新しい木製の玄関ドアや天井、壁の塗装仕上げが完了し、新旧のコントラストがとても際立つ、
リノベーションの醍醐味を感じられるものとなりました。
いよいよ完成を迎えるAさんの住まい。次回をお楽しみに!!
第7回 【最終回】全部つながっていいんです!
ついに完成をむかえたA邸。
ぜひ1話目を見返しながらご覧ください。
リノベーションでつくりあげていく住まいも楽しいですよ!
ブログで何度も登場してきた存在感抜群のタイルと新しい木製の玄関ドア。
窓付きの玄関ドアなので、暗くなりがちな玄関にも自然光が広がっています。
床をモルタルで無機質に仕上げたことで、前のオーナーから引き継いだ
イタリア製のタイルが、より一層際立った印象ですね。
新たな住まいで叶えたかった、
「家族が集まるリビング、みんなで料理できる、ゆったりとしたキッチン」が
Aさんファミリーらしい姿で実現しました。
リビング側から眺めるキッチン。交換した大きな窓から入る光が、
部屋の奥まで差し込むことによって、部屋全体を明るい空間にしてくれています。
重みのある色で仕上げた無垢のフローリングとのコントラストもいいですね~
キッチン側からは、部屋の奥行だけでなく、
今回のリノベーションで設けた吹き抜けがあることによって、
さらなる広がりを得られるLDKとなりました!
細切れだった部屋をひとつの空間へとプランしたLDKには、
Aさんのこだわりが詰まったL型の造作キッチンができました。
家族で対面の作業できるように奥行を広くとったカウンターには、
ブラックでスタイリッシュなミーレ社製IHクッキングヒーターが!
グレーのモールテックスとの組み合わせ、大正解ですね。
ちなみに食洗器もミーレ社製のものが入っていて、幅が60㎝あるので大容量です。
L型のキッチンってコーナー部の収納が使いづらいケースも多いんですけど、
A邸ではダイニングと対面させる面を設けたことで、そのコーナー部分の収納は、
ダイニング側から使えるように計画でき、使いやすいものとなりました。
キッチンの奥に少し見えているのは、パントリーと洗面室です。
その部屋同士も繋がっているので、回遊できるプランとなっています。
洗面台は幅が1m60㎝もあるんです!
なので、ボウルの両サイドにはゆったりとしたカウンターも得られる大きさ。
贅沢な使い方、羨ましい~!
洗面台はカウンターだけでなく、ボウルもモールテックスで仕上げています。
こちらは優しい色合いのベージュ色のモールテックス。
モールテックスはカラーバリエーションが豊富なので、選ぶのも楽しいんです。
床は清掃性を重視して、塩ビタイルをチョイス!
今はいろんな柄の塩ビタイルがあって、A邸ではモルタル調のものにしました。
さいごに、2階の写真で締めくくりたいと思います。
1階とは異なる印象を受けるのは、床によるものでしょう。
1、2階とも同じパイン材のフローリングなんですが、
無塗装の2階は軽やかな印象で、鮮やかな2色のブルーもよく映えています。
2階はお子さんの部屋やセカンドリビングとなっているのですが、
トイレ以外にドアを設けていない点もA邸の特徴。
子どもの成長に応じて、必要なら壁やドアを設けるも良し。
ただ、今は1階、2階、どこにいても大きく設けた吹き抜けを通じて声が届き、
アクティブに家族それぞれの気配を感じられる、
そんな住まいのあり方を大切にしたAさん家族の想いがカタチになりました。